以下は前章の続きである。
国防の危機を前にして戦わない選択肢はないのである。
オバマ米政権も日本も手をこまねいた結果、中国は多くの分野で優位性を手にした。
2020年の東京オリンピックまでに日中の軍事力の差は1対5に拡大する。
孫子の兵法では速やかに戦って勝ち取るべき、中国圧倒的有利の状況が生まれてしまう。
力をつけた中国が日本を核で恫喝(どうかつ)することも十分考えられる。
ミサイルなどを大量に撃ち込み、到底防御しきれない状況に日本を追い込む飽和攻撃も懸念されている。
わが国の弾薬備蓄量の少なさを中国は十分に知っているため、日本の弾が尽きる頃合いを見てさらなる攻撃をかければ、日本は落ちると読んでいるだろう。
一旦達式すればどの国も挑戦すらできない一大強国を出現させるのが人工知能とスーパーコンピューターによる「シンギュラリティ(特異点)」である。
そこに中国があと数年で到達する可能性を、3期連続世界一の袒エネスーパーコンピューターをつくった齊藤元章氏が警告する。
シンギュラリティとは全人類の頭脳を合わせたのよりも優れた知能を1台のスーパーコンピューターが持つに至る事象を指す。
中国が2020年までにそれを達成し、世界を支配するかもしれないというのだ。
中国よりも早く、わが国がそこに立たなければならず、総力で挑むべき課題はここにもある。
いま、国家としての日本の力があらゆる意味で試されているのだ。
ただ、同盟国のアメリカが大統領選挙もあり機能停止に陥っている。
2人の大統領候補はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)反対の姿勢を明確にした。
中国が係争の海にしたアジア太平洋のルールを、日米両Eが先頭に立って確立すべきいま、よりによって米国がそのルールを放棄しようという。
国際力学の再編は読みにくいが、日本の役割の重要性は明らかだ。
日本の課題は、中国の脅威に侵食されない力と意志を持つことに尽きる。
そのために、日本が直面する危険な状況をできる限りの情報公開で国民に伝えるのがよい。
中国の攻撃力のすさまじい実相を共有できれば、国民は必ず賢く判断する。
東シナ海の中間線上に中国が建設した海洋プラットホーム、東シナ海上空での中国戦闘機による自衛隊機への攻撃的異常接近、尖閣に押し寄せる海上民兵、日本が成すすべもなくなる飽和攻撃、対日核攻撃の可能性も含めて、危機情報を国民の目から隠すことは、国民の考える力をそぐことである。国民とともに考える状況を作らなければならない。
そのうえで、誰よりも一番戦争を回避したいと念じている自衛隊制服組の声に耳を傾けよ。
戦争回避のために必要だと、彼らが考える防衛装備と人員を整え、防衛予算を倍増する程の大規模改革を急ぐときだ。 自民党の歴史的使命は、この大危機の前で、憲法前文と9条2項の改正が日本の運命を決することを国民に誠心誠意説くことであろう。