以下は前章の続きである。
櫻井
産経新聞が昭和55年1月に拉致問題を初めて報道しましたが、他の新聞社は報じませんでした。
日本は自分たちがおとなしくしていれば他国が害を及ぼすことはないという考えに浸ってきたんでしょうが、国民の意識の変化はお感じになりますか。
安倍
随分理解は深まったと思いますが、まだ北朝鮮と話し合った方がいいという方はたくさんおられます。
櫻井
随分長く話しあってきましたよね。
安倍
北朝鮮と単なる話し合いをしても時間稼ぎに使われてしまうわけです。
核開発計画を完全に放棄し、検証可能な形で不可逆的に廃棄していくことにコミットさせる。
それを行動に示していくことが必要だと思っています。
半井
私は2~3年前まで政治にほとんど興味がなく、頭の中は「お花畑」だったんですが、それに気づいてやっぱり現実を見なきゃと思いまして。
でも、まだ多くの国民は北朝鮮や中国の脅威という現実に目を向けていません。
安倍
中国は隣国であり、最大の貿易相手国です。
日中が良好な関係を持つことは両国民にとって間違いなくプラスですし、日中関係は間違いなく改善しています。
その一方で中国が軍事力を拡張しているのも事実です。
相当なスピードと言ってもいい。
東シナ海や南シナ海では一方的な現状変更を試みています。
しかし、国際社会が共有するルールにのっとって対応することこそが中国が発展する道になると思います。
そのためには日米同盟を基本として国際社会と連携しながら、中国が責任ある勢力として発展するよう促していくことが大切だと思っています。
そして「自由で開かれたインド太平洋戦略」という私たちの考え方を国際社会に示していくことが大切だと思います。
共通の考え方を持つ日米豪印で連携していく態勢は整いつつあります。
日豪は準同盟に近い関係になっています。
自由、民主主義、基本的人権、法の支配という普遍的価値を共有する国々とともに、この地域を安定させていくことが、中国を含む地域の国々にとって閧違いなくプラスになると思っています。
この稿続く。