文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

たとえば中国では異なる歴史、言語、宗教を擁した種々の民族が次々に王朝を築いた。そして幾世紀かの繁栄の後に全て無残に滅びた。

2022年01月07日 10時36分08秒 | 全般

以下は1月6日に発売された週刊新潮の掉尾を飾る櫻井よしこさんの連載コラムからである。
本論文も彼女が最澄が定義した国宝、至上の国宝であることを証明している。
養子制度で旧皇族の皇籍復帰を急げ
令和4年の今年、国際情勢はまた一段と険しくなる。
中国では習近平国家主席が終身皇帝としての地位を固め、米国ではバイデン大統領が中間選挙で上下両院での多数を失うだろう。
ロシアは事実上中国のジュニアパートナーとなる一方で、プーチン大統領は内外共に強硬姿勢を取るだろう。
中国やロシアの強圧を受けるにしても、米国の後退によって影響を受けるにしても、わが国は波乱含みの国際社会の中でしっかり生きていかねばならない。
そこで大事なことは日本らしさを強さに変えることだ。
借り物の日本ではなく、この日本列島に住み、命をつないできた幾百世代の先人が育んだ価値観、そうした日本らしさこそが私たちの強さであることをしっかりと意識したい。
日本らしさの集積が国柄である。
国柄を大事にすることで私たちはもっと日本人らしく、日本国らしく、揺らがずに自分の道を歩むことができる。
そして、何よりももっと勁(つよ)くなれる。
日本の国柄の第一は万世一系の皇室を戴く国として歩んできたことだ。
これは他のどの国にもない最大の特徴で、宝物のようなものだ。
たとえば中国では異なる歴史、言語、宗教を擁した種々の民族が次々に王朝を築いた。
そして幾世紀かの繁栄の後に全て無残に滅びた。
習近平国家主席は中国5000年の歴史と言って誇るが、それは前王朝を血祭りに上げて夥しい人々を危めた残酷非情な易姓革命の積み重ねに他ならない。
日本は中国とは対照的に一人一人の人間を大事にして穏やかな文化を育んだ。
その日本の国柄の根幹に皇室がある。
しかし現在の皇室を取り囲む状況は必ずしも安泰ではない。
遠因は日本国民の意思とは無関係に、米国が占領政策で11宮家を皇籍離脱させたことにある。
以来75年が過ぎた。
皇族として残られた皆様方は多くのお子様を授かった。
しかし現在、お若い男子は悠仁さまお一人だ。
女性皇族は結婚で皇籍を離れるために、現在15歳の悠仁さまが成人なさって天皇に即位なさる頃、つまり数十年先には皇族がいなくなりかねない。
岸田首相の責任 
こうした状況の打開が長年の日本国の課題だった。
それに関して昨年12月22日、有識者会議が報告書を取りまとめた。
非常によくできた内容だった。
改めて紹介する。
まず皇位継承については今上陛下、悠仁親王殿下の流れをゆるがせにしてはならない、とした。
126代目の今上陛下まで皇位は例外なく男系で継承されてきた。
右の結論はその歴史を踏まえた真っ当な論だ。
皇位継承は悠仁親王殿下まではきちんと道筋がついており、そのあとの悠仁さまより若い世代の皇位継承について今回の報告書は、「具体的に議論するには現状は機が熟して」いないとした。前述のように悠仁さまのご即位は何十年か先のことだ。
継承となればさらに先のことになる。
長い長い先の皇位継承問題をいま論ずる必要がないのは自明の理である。
だがこの点に関して「毎日新聞」は12月23日の「深掘り」で、「皇位継承策は先送り」と論難した。
報告書は皇位継承について、「先送り」などしていない。
皇位継承は悠仁さままではきちんと決まっていると明記したことで、時折浮上する愛子内親王殿下の天皇即位のないことを明言した。
非常に明確な道筋を示したのであり、高く評価すべきだ。 
もうひとつの課題、皇族の数の減少にどう対応するかについても報告書は明快な答えを出している。
①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保つ、②養子縁組を可能とし、皇統に属する男系男子を皇族とする、③皇統に属する男系男子を直接皇族とする、の三つの方策である。 
①の場合、女性皇族と結婚する男性もそのお子さま方も皇族とはならない制度とすれば、この方法で皇族数を確保しても皇位を担うことができないという欠点がある。
3案中、最善の方策は②であろう。
旧皇族の方々が対象となるが、竹田恒泰氏が「言論テレビ」で度々指摘してきたように、秋篠宮皇嗣殿下よりも若い、皇統に属する男系男子は現在20人以上いらっしゃる。
さらに近年、旧宮家では多くのお子さんが誕生しており、男系男子の数は増えているとのことだ。
つまり、養子縁組の対象たり得る皇統に属する男系男子はかなりの数の方がいらっしゃるのだ。
これら旧皇族の方々は現在の皇室の方々と親戚としての交流があり、皇族の日々がどれほど大変かを知っている。
同時に、自ら皇族に復帰したいというようなことは、己れをわきまえ決して自ら言い出すことはないという。
政府の役割は、これら旧皇族の皆さんと意思の疎通をばかり、適任者或いは相応しいご家族を選ぶ手助けをすることだ。
皇室の方々とも話し合い、相互の理解と協力の中で旧宮家の方々の養子縁組がスムーズにいくよう力を貸すことだ。
悠仁さまを支える態勢構築に一日も早く着手するのが岸田文雄首相の責任である。
日本弱体化計画 
旧宮家の方々の皇籍復帰については、戦後70年以上も民間人だった人々の復帰は違和感があるとして反対する声もある。
しかし、上皇后陛下は民間人でいらした。
紀子皇嗣妃殿下も雅子皇后陛下も同様だ。
それでも、お三方の皇室入りを国民は熱狂的に支持したではないか。 
旧皇族の皇籍離脱は日本国民が望んだのではない。
先述したように、GHQがいきなり命令したにすぎない。
皇室の弱体化は占領軍の日本弱体化計画の大きな柱でもあった。
旧皇族の方々は民間人となってもずっと皇室との交流を続けてきた。
皇族数の少ない今、この方々が養子縁組の形で皇籍復帰するのはむしろ自然なことだと思う。
GHQの日本弱体化計画の呪縛を解く時期だ。
憲法学者の百地章氏も②の案を強く支持する。
百地氏の指摘が興味深い。
皇室の歴史を遡れば皇族の養子受け入れはしばしば行われてきたというのだ。
たとえば四つの世襲親王家(伏見宮家、桂宮家、有栖川宮家、閑院宮家)では歴代の当主が天皇の「猶子」(名目上の養子)とされた。
その上で親王宣下を受けて(天皇より、親王としての地位を認められ)、宮家を継承してきたが、当主不在のときは天皇の皇子が養子になり、宮家の存続を図ってきた。
11代続いた桂宮家の場合、7人の当主は天皇の皇子が養子として入った方々だった。
前述したその他の宮家も皇統に属する男子を養子にしてきた歴史がある。 
民間でも養子制度は活用されている。
赤ちゃんが養子になる場合も、大人がなる場合も含めて多様な形がある。
前向きに考え、悠仁さまの友ともなり、支えていく相談役ともなり得る一群の皇族の方々を迎えるのがよい。
皇室の安泰を図り、日本の未来の安定につなげたいと思う。

 


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