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日本企業、M&Aで形勢逆転なるか…日経新聞8月18日6面より

2011年08月18日 13時46分25秒 | 日記
国内再編への壁厚く

日本の大手製造業を経営する困難さを考えてほしい。経済は20年間停滞し、この3四半期はマイナス成長が続く。為替は1ドル=76円25銭の最高値を突破する寸前で、輸出企業の利益を圧迫。

政府は機能不全に陥っている。人口は減り続け、国内市場は2050年までに最大25%縮小する。各社が形勢逆転を狙い、企業買収や合併に動くのもうなずける。

奇跡的な景気回復がないならば、2つの選択肢が考えられる。強い円にモノを言わせ、手元資金を使って海外に進出する。またはコスト削減とスケールメリットを狙って国内企業を買収し、長期的に収益を改善する。

手法としては前者に人気がある。キリンホールディングス(HD)はブラジルのビール2位、スキンカリオールを買収すると発表した。26億ドルで発行済み株式の50・45%を取得する。今年3番目の大型案件で、日本の飲料業界でも史上3番目の規模となる。

ブラジルは世界第3位のビール市場で、ここ5年は年間売上高が12%ずつ伸びている。しかし、買収価格が高すぎ、事前の調査不足が否めず、実現は困難と思われる。

しかも、買収による相乗効果を見込めない。キリンは今までアジア太平洋地域の外への進出に関心を示さなかった。域内のオーストラリア、ベトナム、フィリピン、台湾、タイで事業を展開している。

国内の大手他社と合併すればリスクは低いだろうが、実現への壁はさらに厚い。日立製作所の中西宏明社長は三菱重工業との統合協議に道を付けたように見えた。

両社の事業領域は原子炉、船舶、鉄道車両、通信設備など幅広く、水力発電プラントや新交通システムで協力している。

中西社長が統合協議入りを表明した時、歴史的瞬間が来たと思われた。年間売上高1500億ドルを超える巨大企業の誕生を投資家が期待し、両社の株価は上昇した。

ところが日立は発表について三菱重工の了解を得ていなかった。残念なのは、この流れに他の大企業が追随すれば、日本の国際競争力が押し上げられる可能性があったことだ。

今のところ、日本企業のM&A(合併・買収)の成果は、キリンが契約すべきでない案件を契約し、日立と三菱重工が踏み切るべき決断から後ずさりしている。日本が変革を遂げる日はまだ遠い。

(17日付)=英フィナンシャル・タイムズ特約


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