以下は前章の続きである。
「慰安婦問題どう伝えたか 読者の疑問に答えます」と題した8月5日付け朝日新聞紙面
日韓関係にもたらした悪影響に対する自らへの言及なし
櫻井 強制連行が独り歩きしたために、何が起きているのか。韓国の人たちが今米国で慰安婦を題材にした「コンフォート(comfort=奴隷)」というお芝居をしていますね。ニュースで見ましたが、嫌がって泣き叫ぶ女性を暴力的に連れていく、犯そうとするシーンが舞台で描かれています。慰安婦問題について何も知らない米国の方々は「こんな話があったなんて知らなかった。なんてひどい話だ」と思うのは無理もなく、実際、そういうコメントを出しています。
朝日がつくり出した話が、こういうふうにまさに国際問題になって、あたかも事実であるかのように独り歩きを始めている。銅像の設置もそのひとつです。
責任の重さをはかり、にもかかわらず朝日がほとんど反省していないことを考えると私は、朝日新聞の廃刊を促したいと思います。文藝春秋が雑誌「マルコポーロ」でユダヤ人虐殺事件をめぐる記事で廃刊になりましたね。
門田 アウシュビッツ収容所に「ガス室はなかった」という記事だったと思います。
櫻井 それからもう一つ、アグネス・チャン氏が講演で高額の講演料だという記事を書いたけれども、それが必ずしも事実でないとわかった講談社発行の雑誌、「DAYS JAPAN」も廃刊になりました。後者の判断が妥当か否かは議論の余地があると思いますが、とにかく廃刊になった。ちなみに「DAYS JAPAN」は廃刊から十四年後に別の経営体から再び出版されています。今回朝日の行ったことは、この前二社に比べても負けず劣らずひどい。朝日の行ったことは、過去の日本人、現在の日本人、そして未来の日本人、日本国に対する犯罪的報道ではないでしょうか。
すでに少し触れましたが、朝日の報道が「日本人はそんなに悪いことはしていない」と考えていた多くの韓国人に悪影響を与えた。これも見逃せない点です。韓国でも「慰安婦の強制連行などはなかった。実は父親や夫が売ったのだ」という真面目な論文や本を書いている学者もいるわけです。しかし、そうした話を全部横に飛ばしてしまって、日本軍が強制連行したという間違った話に仕立てて、本来はもっと親日的であり得た人々を、反日に駆り立ててしまった。韓国では今や親日的なことを口にするだけで社会的に抹殺される状況です。その意味で朝日は韓国の人々にも、計り知れない不幸を負わせている。朝日の責任は大きい。だからやっぱり朝日を一回廃刊にしてジャーナリズムをやる気があるのならば、新しい陣容でもう一回新聞を立ち上げなさいというところに来ていると私は思います。
阿比留 朝日は六日付の検証記事では、一ページを割いて「日韓関係なぜこじれたか」と書いているのですが、そこに自社の責任はまったく言及がない。先の政府の河野談話の検証報告書にも、平成四年の一月十一日付の朝日新聞の記事によって韓国世論が過熱したという指摘がされている。にもかかわらず、そういうこともまったく触れていない。私はあるとき─これは冗談ですけど─「世の中に絶えて朝日のなかりせば 日韓関係のどけからまし」とちょっと詠んでみたのですが…。
櫻井 いいですね。(笑)