以下は現在発売中の月刊誌Hanadaに「左折禁止!」と題して掲載されている山際澄夫の連載コラムからである。
日本国民のみならず世界中の人たちが必読。
朝日新聞が敵視する「核抑止」
日本は戦後最悪の安全保障環境に直面している。
ロシアはウクライナ侵略を続け、核兵器使用の威嚇を繰り返す。
中国は軍事力による台湾併呑の野望を隠さない。
北朝鮮も核、ミサイル開発をやめない。
日本の周辺が世界で最も軍核が激しいのである。
だが、七月末に発表された令和五年版防衛白書からは、何があっても国民の「命と暮らしを守り抜く」との強い決意が伝わってこない。
反撃能力の導入、防衛費のGDP比2%程度までの引き上げ決定後初の白書なのに、むしろ最初から腰が引けているように思えてしまう。
たとえば、中国の軍事動向をどうとらえるかという問題がある。
中国は日本にとって最大の懸念であり、本来なら「脅威」と呼んで当然だろう。
ところが、白書は脅威という言葉を避け、「これまでにない最大の戦略的な挑戦」という表現にとどめているのだ。
中国の国防費は過去10年間で2.3倍、30年で42倍という驚異的な伸びを示してきた。
その結果、中国は通常兵器だけでなく、核兵器でも米国を凌駕しようとしている。
それを「最大の戦略的な挑戦」としたのは中国への配慮からか、米国と歩調を合わせたのだろうが、いずれにしても卑屈過ぎる。
白書からリアリティを奪っている最大の問題が、中国、ロシア、北朝鮮の核にどう備えるのかという「核抑止」態勢についての具体的な記述がないことだ。
核については、ロシアの威嚇や中国、北朝鮮の核戦力の増強が個別に述べられているだけだ。
その一方で、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」という「非核三原則」を「専守防衛」とともにわが国の「基本政策」として紹介している。
米国の核の傘の信頼性に疑問が投げかけられ、核不拡散体制が崩壊しつつあるときに、非核三原則を「国是として堅持している」というのだから正気とは思えない。
ロシアのウクライナ侵略を受けて、安倍晋三元首相は「NATO諸国が行っている米軍の核を共有する核シェアリングを含めタブーを設けず議論するべきだ」と問題提起したが、岸田政権も自民党もろくに議論もしなかった。
韓国の尹錫悦大統領は四月の米韓首脳会談で、拡大核抑止の信頼性の向上を目指す共同文書を発表したが、「核抑止」では韓国に1歩も2歩も後れをとっているのが日本だ。
防衛論議を不毛にさせているのはメディアである。
白書に「核抑止」戦略が欠落していることを指摘し、〈日本国民にとっての核の脅威と、それに備える核抑止を取り上げてほしい〉と主張したのは、主要紙では産経新聞だけだった。
朝日新聞は、核の効用を認めることになってしまうとの立場から「核抑止」を執拗に攻撃している。
八月六日の広島原爆の日の翌日、朝日は松井一實市長の「核抑止論は破綻している」との発言を大きくとりあげたのをはじめ、五月のG7広島サミットでも、「核抑止」が正当化されていたとして、今核抑止論によることなく核廃絶に取り組むべきだ」という被爆地の声にどう向き合うかが問われている〉などと、「核抑止」否定記事を紙面に溢れさせた。
元空将の織田邦男氏は近著で、〈被爆国だからこそ、日本は2度と核の惨禍を受けることがないよう核抑止戦略を構築しなければならない〉〈「唯一の被爆国」というのは「特権」でもなければ、敵が攻撃を躊躇してくれる「抑止力」にもなりえない〉(『空から提言する新しい日本の防衛』ワニ・プラス)と指摘している。
核は核でしか抑止できないのである。
憲法九条があるから平和が保たれてきたと信じる似非平和主義者には、逆立ちしても理解できない安全保障の現実である。
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