以下は有数の読書家である友人が、本当に読み応えのある論文や対談が満載だから、と、購読を勧められた、別冊正論「堕ちたメディア」、「メディアはなぜ堕ちたのか」の特集中の第二弾、本当のことを書かないからだよ、と題して掲載された、高山正之×斎藤勉、聞き手、田北真樹子による対談特集からである。見出し以外の文中強調は私。
田北
産経新聞記者として国内外の情勢を長年報じてこられてきたお二人に、メディアのあり方についてお話ししていただきます。
テーマは「墜ちたメディア」ですが、なぜメディアはここまで叩かれる存在になったと思いますか。
高山
逼塞し低迷する日本のどこが悪いのかを尋ねると、野党がだらしないとか、自民のマンネリ化がだめとか言う。
でも、ここまで日本を堕としたのは、政治だけのせいじゃない。
世論を動かすマスコミに過半の責任がある。
例えば、先の大震災で東電福島が問題を起こし、結果、日本から原子力エネルギーが消されつつある。
世界がますますそれに頼り、原発を増やしつつあるのに、日本はそれに逆行し、東電を極悪非道のように罵るけれど、それはおかしい。
事実を言えば福島事故はあれを作った米GEのプラントの欠陥のせいだ。
しかし、メディ アはGEの名も隠し、事実を何も伝えない。
放射能汚染にしても、年間1ミリシーベルトの許容量も米国の創った冗談なのに、それも隠す。
正しく報道する気がない。
斎藤
東電憎しという報道はあるけど、技術的なことで掘り下げたものはあまりありませんね。
高山
東電ばかりを例に取るのも何だけど、新聞は出すべき「事実」を一切出さず、反原発イデオロギーで報じる。
判断基準は「弱者の味方」で、この場合は東電が悪で避難を余儀なくされた民を絶対の弱者に仕立てる。
別の見方をする政治家や評論家は即座につぶすのが新聞の使命だと思っている。
斎藤
全て新聞イデオロギー。
それは日本だけの現象ではないでしょう。
スターリン華やかなりし頃、それに憧れたニューヨークタイムズのウォルター・デュランテイはウクライナの数百万人餓死を隠しスターリンを褒めたたえ、ピューリッツァー賞までもらった。
少し前、ウクライナの人々がせめてピューリッツァー賞だけでも取り消せとニューヨークでデモをやった。
高山
イデオロギーがまずあってなんだよね。
田北
お二人が現場記者として活躍されていた時代に今のようなメディア批判はありましたか。
斎藤
産経だけが叩かれているって時代もあったじゃないですか。
高山
でも、昔の産経を見ても、台湾知識人を虐殺した蒋介石を反共の雄みたいに褒めたり、一方で中国帰還者連絡会(中帰連)の言う「中国人を炉にくべて燃やした」話を載せたり。
朝日の本多勝一と似たような記事も結構あった。
斎藤
「正論」ができたのが昭和四十八年ですからね。
私が入社した翌年でした。
高山
その「正論」も、ものが見えてなかったところはある。
新聞はどうしても安易にイズムに乗っかってしまう。
反省なしに戦後やってきたところはある。
田北
一九八二(昭和五十七)年には教科書問題がありました。
日本の文部省が検定で「華北への侵略」を「進出」に書き換えさせたと新聞が一斉に報じた問題。
高山
あの時、渡部昇一が、その年の『諸君!』十月号に「萬犬虚に吠えた教科書問題」を寄稿して、事実が分かった。
新聞は聞こえない振りしたけれど、産経だけは見直して謝罪した。
それを追いかけるようにして起きたのが、朝日の毒ガス報道(詳細は三十五ぺージ)だ。
あの時も産経の社会部デスクの多くは躊躇いがあった。
一つは大朝日にたてついてどうするのか。
だいたい他紙を批判することは一切ない時代だった。
それともう一つが日本軍だって何をしていたか分かんないじゃないか、といった観念論がまだあった。
で、原稿は出稿した
石川水穂に突き返されていた。
こっちは新参のデスクだったし、そういう観念も希薄で「面白いじゃないか」って社会面トップで派手にやった。
斎藤
「正論」もしばらくは社内でも浸透してなかったんですよ。
だけど、文化大革命中の一九六七(昭和四十二)年に当時の柴田穂北京支局長が中国政府により追放処分を受けた。あれが事実上、「正論」路線のきっかけですからね。
高山
そうだね。
斎藤
柴田さんが帰ってきて、「わたしは追放された」って記事を百回ぐらい一面で連載した。
文革の真相である中国の権力闘争というか、中国の共産主義の本質を全部暴いたこの連載が、「正論」の発端であり、中国共産党・ソ連共産党というのは、とんでもない体制だと告発した。
ソ連や中国がどういう体制か、一般の読者はもとより新聞記者さえよく分からなかった。
それがだんだん浸透していって、やっと分かってきたっていうのが最近でしよ。
高山
本当に時間がかかったと思う。
天安門事件のときですら「中国が安定することはいいこと」と主張していた。
隣の国は不安定でいた方がいい。
実際、毛沢東の時代、あちらで大虐殺が続いていたころ、日中間は一番うまくいっていた。
それがあっちが安定した途端、尖閣に始まって日本の政治も財政も治安も乱され、犯された。
隣国の安定は一番悪いことだ。
韓国も同じだよ。
斎藤
天安門事件の三年後に天皇陛下(上皇さま)の訪中があったわけですが、これはマスコミ全体に責任があると思うんです。
産経は結構反対したんですよ。
あの時代は共産主義の本当の怖さっていうのが分かってなかった。
高山
だから、あなたが書いてる通りなんだよ(「正論」平成三十一年四月号)。
「絶対ロシアを許すな」って。
あのインチキ大使(ロシアのガルージン駐日大使)が言っだことに反撃すること、まさにあれが必要なんだよ。
この稿続く
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