以下は前章の続きである。
諸葛
SAMPSONは解析コードですから、きちんと物性値データを入力しなければ答えは出てこない。
高温のデブリの物性値の根拠を示す必要がありますね。
根拠のない偏った見方を、「検証」と称してさも真実であるかのように書いていたら大問題です。
「日本はダメ」と言いたい
奈良林
非常用復水器(IC)の記述にしても、吉田所長がICがずっと勣いていると誤認していた初動対応のまずさが一号機の水素爆発を招いた主因であり、日米の比較を持ち出しながら〈失敗から学んだアメリカと学ばなかった日本〉(P120)などといって、日本ではICの安全設計などについての正しい認識を持っていなかったと断罪します。
ところが、ICは日本原電の敦賀原発1号機にも設置されており、そこでは20回以上も正常に稼働しているのです。
諸葛
敦賀では落雷が多くありますが、ICの作動によって事故をきちんと防いでいますね。
奈良林
日米の差で日本がダメだったのではなく、これまで使用する必要があったかなかったかの違いこそが本質です。
「福島原発はダメだ、失敗した」ばかりで、では、同じ日本の敦賀はなぜしっかりと稼働できているのか。
公平な検証であれば、そうしたこともきちんと読者に伝えるべきです。
石川
本では、アメリカではICは非常用炉心冷却系(ECCS)の一つに位置付けられているのに、東電ではそうなっていなかった。
日本の認識は甘いとしているが(P123)、これがまた不勉強の間違い。
この稿続く。