Fさんの偉さ。
第一勧銀大阪支店で決済が終わった後に、所用で帰り道が一緒と成った常務を車に乗せていた時の事だった。
私は車載の携帯電話が発売された時、真っ先に購入し据え付けた人達の一人だったのだが、車に乗り来むなり、彼は言った。
「キサラ君、電話を借りても良いかい」「勿論ですとも。どうぞ、お使い下さい」
彼が自分の部下に、取引がつつがなく終了した事を告げているのを聞いていた時、私は、つくづく思ったのである。
「Fさんは偉いなぁ」と。
「有難う、お陰で助かった」と受話器を置いた彼に、その旨を伝えたところ、彼はオウム返しに、こう言ったのだった。
「キサラ君、僕は、社会生活はストレスを産み出すものだと思っている。彼は部下だから…上司である僕の、人生初めての不動産取引の成否を心配している。おまけに僕は、これから用事が在るので、直ぐには社には戻れない。僕から電話が有った瞬間に部下のストレスは消える…」
「流石ですなぁ、常務は…。感心しました。」
本当に偉い人だと私は思うのである。
簡単に言えば、真のエリートとは、こう言う人をいうのであり、
巷に2割は棲息している悪党どもというのは、この反対で生きている、棒にも箸にかからない等ととしか表現されない人間達の事であるのは言うまでもない。

2012/3/25、午後1時過ぎ、法隆寺・夢殿にて。