「空気に浮かれる日本」・「変えられない日本」を白日の下にさらした歴史的オリンピック

2021-08-01 11:16:16 | 感想など

この前「このオリンピックで『大したことは何も起きない』」と書いたが、まあ大よそ想定の範囲内で事態は推移している印象。

 

私が上記のように書いたのは、投げやりになったのでも何でもなく、例えばダイアモンドオンラインの「メダルとコロナの『Wラッシュ』で、日本に起こる3つのこと」で述べられているような認識があるからだ。

 

つまり、元々コロナによる日本の重症患者や死者数は欧米やインドなどと比べれば抑えられていたのだが、それは高齢者のワクチン接種(と言っても接種率は7割程度とされるが)によって、より顕著となる。というのも、コロナで特に問題となるのは、単純に感染者が何人かではなく、高齢者の感染と、重症患者の数(つまり死亡リスクが高い感染者数はどのくらいいるのか)だからだ。懸念される変異株も、なるほど感染力こそ高いものの、ワクチンによる重症化を防ぐ効果は認められており、ゆえに従来のコロナと同じ発想で対処できると考えられる。

 

というわけで、爆発的に増える感染者数は危機感を煽り、緊急事態宣言も範囲と期間を拡大し、指定病院のスタッフは凄惨な労働を強いられるだろうが(これには心から同情する)、最終的には感染者数は落ち着き、ワクチン接種も進み、コロナと共存する状況が生まれてくるであろう、という話である。

 

では、「大したことは起きない」という私の発言は「大きな問題はないから杞憂せず安心してよい」という意味かというと、それは全く違う。正しくは「危機的に見える状況についても、主に現場の必死の努力により、何とか乗り切れる(乗り切ってしまう)公算が高い。そしてそのことは、最も大きなシステム的問題が放置されることにつながるだろう」という話だ。

 

そもそも、このような事態が惹起した原因は何だろうか?いくつも挙げられるだろうが、たとえば

・先進国内でもワクチン接種率の低さ(オリンピックをやることでスケジュール調整してたのに何で??)

・欧米より少ない患者数でも崩壊の危機に瀕する日本の医療システムとその残存(現場そのものの奮闘はまた別の話)

・明確な法令ではなく「要請」・「お願い」という形で人間の行動をコントロールしようとし、結果的にコロナフォビアの空気を作り上げて情勢に対処しようとした(ゆえに人が非科学的な恐怖心や反発心で行動したとしても、それをただ個人の資質に帰せられるかは疑問)

・休業要請についても、例えば飲食店であれば地域によっても売り上げや地代は大きく異なるわけで、一律で対応するのは「悪平等」と言える。なるほどコロナが広がったばかりの頃こそ「まずはロックダウン」となるのはわかるが、1年経ってもやっていることの本質が大して変わらないのは、例えば飲食店を本気で救済するつもりがないんだろうなと見える(コロナが落ち着いてる間に何をやったかと言えば、未来に向けた調査や精査ではなく、あたかも「克服した空気づくり」を目指すようなGo toキャンペーンだったことは記憶されている方も多いだろう)。それで守らない店が出るのを不思議に感じたり批判したりする方がちょっとどうかしているんではないかと思う。

 

という具合。以上のようなシステム的不備から、何とか交渉してオリンピックを中止にしましたとかならまだわかるが、結局はオリンピックをやることになっており、環境を整える責任があったにもかかわらず、ここまでお粗末な状況を作り上げてしまったというわけである。このことから、日本(少なくとも日本政府+α)には様々なしがらみもあって、仮にシステムを変える能力が意思があったとしてもまともに動けないことは理解されるのではないだろうか。であれば、オリンピック後の、そしてアフターコロナにおける不況などへの対応についても類似のことが起こると考えるのが自然だろう。

 

ちなみに私が少子高齢化する日本に未来がない(抜本的対応ができず衰退が止まらない)と思っているのは、こういう日本の性質を先の大戦とその敗北はもちろん、東日本大震災でも今回のコロナ禍でもつぶさに観察でき、それがこの後20~30年で変わると予測できるような要素はないからだ(ちなみに、よく日本にはまだこんな可能性があるという言説もよく見られるし、それが必ずしも間違っているとは思わないが、その多くはポテンシャル=潜在能力であって、それを十全に活かせるかどうかはまた別の問題である。そしてそれを活かせる余地は元々少なく、今後それはさらに失われていくだろうと私は考えている)。

 

というわけで、開会式がどうのとかメダルがどうのとか何をバカ騒ぎをしようとも(それ自体は別に何も生み出さないので好きにすればいい)、このオリンピックは「祭りで浮かれる日本人」・「システムを変えられない日本」というものを浮き彫りにしたのであって、それは狂騒の後で苦しい経済状況とともに我々に重くのしかかるであろう、と述べつつこの稿を終えたい。


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