ジャニーズ問題のフェーズが変わる時:刑事訴追の可能性

2023-09-30 12:15:09 | 感想など
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
両極端な話は常に平行線となるものだが、多様な認識と事態の見通しを立てるにあたっては、それらを並べてみるのにもそれなりに意味があるだろう。自分は前者の「ベテランテレビマン」のひたすらドメスティックな視点にも、逆にこの問題が一気に日本のコンテンツ全体に影響を与えるという発想にも与しないが、組織の中で硬直した思考の人間が何を考えているかを知り、同時にグローバル企業が最悪の事態としてどういった状況を視野に入れているかをイメージするのには役立つと思われる。
 
 
 
今は10/2の会見内容に注目が集まっているが、誤解を恐れずに言えば、それでも「しょせんは日本内部でジャニーズ問題周りをどう調整するかというレベルに落ち着く」ものと思われる。ではそれを超えて大きく事態が動きフェーズが変わるのは何によってかと言えば、今はあまり話題になっていないが「刑事訴訟」だろう。
 
 
こう書くと国内のそれを連想するかもしれないが、そっちは(少なくともすぐには)あまり可能性が高くないのではないか。というのも、今は当事者の会が良くも悪くもメインの流れを統一・コントロールしていて、会社としては現状補償をしていくスタンスになっているから、ここで一気にアクセルを踏み込むメリットがないからだ。
 
 
もちろん、そうして問題が大きくなった方が、裁判の過程でマスメディアや企業との癒着などが芋づる式に出てきて公式記録として残り、もって一層ジャニーズや大手メディアの解体が進むという意見はあるだろうが、その見立てが妥当だとしても、被害者側がどこをゴールに設定している(理想と思っている)かはまた別の話である。というか、その事態を狙って被害者に対し刑事訴訟を強く求めるような発言をすると、望月某のようなスタンスになり、アウティング要求として被害者はもちろん社会からの印象がかえって悪くなり、事態究明の足枷にすらなりかねない悪手だと私は思う(やるならもっと戦略的に賢くやりなさいよ、という話)。
 
 
ならばどこで訴訟が?という話だが、例えばハワイなど海外での訴訟が考えられる。国によってはイギリスなどのように子供の性被害について時効がないケースもあるため、そこで訴えが起こされる可能性を考慮しているのである(もちろん現状では可能性の話だが)。
 
 
これまでのところ、ジャニー喜多川の性犯罪を糾弾する姿勢に対し、特にBBCの報道がなされた頃は「犯罪になっていない」「刑事事件化していない」という反論がよく聞かれたが、後者の刑事事件の前提が完全に吹き飛ぶわけである。このような流れの中で、もちろん海外の注目が強まり、スポンサー離れがさらに進めば、国内メディアもその影響を受け今まで以上に報道せざるをえなくなると予測されるが、そこで法廷に記者会見には出ていない前副社長が引きずり出され、他にも証言台に立つ証人たちが出てきたら、いよいよジエンドという状況になるだろう。
 
 
ここまできても、動きの鈍い政府や警察といった公的機関がどこまで動くのかは怪しい。ただそれでも、BBCが日テレの番組の人権侵害を取り沙汰したみたいな形で海外大手メディアが波状攻撃をかけ、さらに国連の調査報告書などで芸能界全体の問題だったとさらなる外圧がかかれば、もはや損得勘定的にも動かざるをなくなるのではないか(今回の事態のキーワードは「官僚主義」と「事なかれ」だと言えるが、その権化のような連中も自分の保身に直結するなら行動すると思われるので)。
 
 
そしてこの段階になると、ジャニーズや大手マスメディアの擁護はもちろん、静観ですら火だるまになるリスクがあるため、潮が引くように人がいなくなり、より徹底的な解明・解体作業が進んでいくと思われる(「鬼畜米英」から「アメリカさんありがとう」に鞍替えしたあの戦争の時の振る舞いが思い出される)。
 
 
ただ、そのような中で、冒頭の動画にもリンクするが、一歩扱いを間違えれば、国際市場からの締め出しをくらうリスクが潜んでおり、それもジャニーズ問題の行方について、注目しないわけにはいかない理由の一つである(現状では言いがかりのようなマリオの映画など日本のコンテンツに対するポリコレ的批判などが、「性加害容認国家の製造物」というお墨付きをもらって大きな流れになる事態を考えてみるとよい。私は最近ネタとして露悪的に取り上げたしぐれういの歌マリオのネタなどを書いたが、こういった話が大真面目に論じられ、批判・排除される馬鹿げた状況が惹起するかもしれない、ということだ)。以前「ジャニーズの問題はソフトパワーの重要性を理解していない人々が目先の利益しか見ないことによって生じた側面がある」という松谷創一郎の指摘に触れたが、今回の問題の取り扱いを間違えると、ソフトパワーの「挽回」どころか「崩壊」の可能性すらある(つまり大きく国益を損なう)ということをくり返しておきたい。
 
 
もちろん、今でも被害を訴えている人々を口汚く罵っているような人たちが、「その程度のこと」でジャニーズの非を認めるようになるとは全く思わないし、何となれば窮状になればなるほど先鋭化していくことすらありえる。とはいえ、その人たちの誹謗中傷が(集団)訴訟で完全に社会的害悪と認定され白眼視される可能性は高いから、カルト化した集団と同一視されたくないファン離れが加速していくのではないかと思われる。
 
 
・・・とまあ問題のフェーズが大きく変わる可能性として刑事訴追とその後の変化について簡単に触れてみたが、ここまで書けばわかる通り、「ジャニーズに興味ないなら放っておいて(何で口出すのウゼー!)」といったような認識でいる人たちは、問題が個人の興味関心のレベルをとっくの昔に超えており、もはや国益すら脅かしかねない状況にすら到っていることを理解していないと言える(この辺は戦前における愛国を訴えながら外交センス皆無の国粋主義者と似ている)。その程度には事態が深刻になってきていることを指摘しつつ、この稿を終えたい。

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