負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

物理学者中谷宇吉郎は荒唐無稽な物語を愛読した

2005年01月21日 | 詞花日暦
思い切った非科学的な教育が
自然に対する驚異の念を深める
――中谷宇吉郎(物理学者)

 石川県の雪国に育った中谷宇吉郎は、子供のころ、最初に熱中したのが『西遊記』だったという。「画の多い字が一杯並んで、字づらが薄黒く見えるような頁が、何か変化と神秘の国の扉のように」幼い彼をそそった。現代の若い読者とは正反対である。
 中谷を魅了したのは、「放恣な幻想がその翼をかつて奔放に虚空を翔けまわっている」ふしぎさ。今日の科学的思考では、容易に認めがたい迷信や怪異の荒唐無稽な物語である。だが中谷は、ほんとうの科学は純真な「驚異」から出発すべきだと書いている。「不思議を解決するばかりが科学ではなく、平凡な世界の中に不思議を感ずる」ことも科学の重要な要素であると。だから、幼い日の奔放で荒唐無稽な夢を子供から取り上げない方がいい。
 凡庸な科学知識を振り回し、原子や分子などと日常茶飯に口にすると、逆に物質の神秘に対する驚異の念を薄くする悪影響を与えるのではないか、とも語っている。