負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

いつの時代も性革命は人の生理をあからさまにした

2005年01月26日 | 詞花日暦
ことばと行為には長い間、乖離があった。
私は小説『彼女』で両者の結合を試みた
――匿名作家(米の高名な小説家)

 未成年の頃に読んだコレットの『青い麦』は、海辺で繰り広げられる少年と年上の女性の微妙な心理を描いていた。ひそかに心躍るものがあったが、少しのちに読んだ『チャタレー夫人の恋人』は、ものの見方が一変するような読書経験をもたらした。性に対する視界が大きく開けた。
 一九六○年代のアメリカを席捲した「性革命」は、それまでの米社会が厳格な性倫理と法規によって成り立っていたことを物語っていた。その呪縛が、夫婦や隣人という小さなコミュニティから破られていく様子をゲイ・タリーズは『汝の隣人の妻』で描いた。当時のベストセラーで、性の深く広い世界を垣間見た。
 七○年代、やはりベストセラーになった『彼女』とそれにつづく一連の作品にも驚いた。それまでことばと行為の間にあった思わせぶりな垣根を、小説としてみごとに取り払っていた。いたずらに感覚を刺激するだけのことばではない。紛れもない人の行為の本質を暴き出し、男女とは何かを淡々と表現することばの連なりだった。