負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

羽子板つきは子供を毒虫から守るためだった

2005年01月02日 | 詞花日暦
正月の羽子板は民間信仰の
名残りをとどめている
――むさしや豊山(羽子板職人)

 正月になっても、羽子板をつく光景がすくなくなった。東京の下町で、四代にわたって羽子板をつくってきた「むさしや豊山」によると、「羽子板はゲームやスポーツとは関係がありません」。羽根を落とさず、できるだけおおくの回数をつくのがたいせつだという。
 羽子板でつくった羽根の原型は、茨城県筑波山辺りに採れた「つくばね」という木の実。羽根が付いて、どこかトンボに似ていた。トンボは害虫や毒虫の天敵だから、子供たちを毒虫から守り、害虫を追い払う祈りとして「つくばね」を板で飛ばした。
 羽子板もはじめは平凡な板だった。後の徳川三代将軍家光の時代、京都の公家社会に倣い、華麗な装飾の板が流行した。羽子板の表面が貼り絵から押し絵に変り、実際に羽根突きなどできない飾り物になっていった。江戸の町人文化・消費社会は、いまと同じように飾りにこだわり、人の祈りや願いを遠くへ押しやった。