菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

講義録: 法律上の会社とは(4) ~営利性について

2011-08-01 00:00:00 | 会社法学への誘い
 さて、社団とは、複数人が特定の共同目的を達成するために結合した団体を意味すると説明いたしました。社団では、共同目的を達成するために、徒党を組んでいる人々が同じ方向に顔を向けているわけです。この共同目的が金儲けであるものを、会社といいます。すなわち、営利目的の社団法人、これのみを会社というわけであります。

 会社の営利性とは、通説的見解によれば、①対外的な企業活動を行い、②それによって得た利益を構成員に分配することを意味します。これに対して、営利性とは、①の意味に尽きるのであり、②までを含ませるのは営利性と私益性を混同するものと指摘する有力な反対説があります。ちなみに、商人の営利性については(商法4条1項)、①のみで足りるというのが、一般的な理解です。

 この点、会社法では、会社の活動を表現する従前の「営業」という用語の大部分を「事業」と変更しています。たとえば、事業報告(会社法435条2項)、事業譲渡等(同法467条1項)などです。しかし、会社が対外的経済活動を行うという本質に変更があるはずはなく、また、構成員に対する剰余金の分配も前提としているため(会社法105条2項・453条・621条・628条)、会社法においても、営利性は会社の本質的な要素・属性であるといえます。

(次回に続く)