菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

監査・監督委員会制度(2)

2011-10-03 00:00:00 | 会社法制の見直し
制度選択のメリットはあるか

 この制度を選択した場合、現行の監査システムと比べて、企業にとってメリットが本当にあるのでしょうか。また、株主にとってのメリットとは何でしょうか。

(1)選択肢の増加
 企業側のメリットとしては、従前の監査役設置会社と委員会設置会社に加え、第三の機関設計に関する選択肢が増える点が挙げられるでしょう。
 特に「監査・監督委員会設置会社」では、指名委員会・報酬委員会の設置を強制されないため、委員会設置会社のような導入に際しての抵抗感は少ないものと思われます。
 しかし、現行会社法は機関設計の多様化を図っており、すでに9類型の機関構成を用意しているのです。しかし、現実には、そのすべてが十分に利用されているわけでもありませんし、各制度の実務的な使い勝手の良さも何ら検証されてはいません。
 たとえば、中小企業のガバナンス向上のために「鳴物入り」で導入された会計参与を設置した会社がどのくらいあるのでしょうか。こうした状況下、いわば理念先行型で新しい制度の導入を急ぐだけでは、会社法の機関構成を複雑にするだけという結果にもなりかねないと思います。

(2)資金調達の便宜
 また、資金調達の面からのメリットも考えられるでしょう。
 Market(特に外国投資家)は、独立性の高い社外取締役の確保を要望しているとよく耳にします。委員会設置会社への移行に躊躇する企業でも、海外からの資金調達ニーズがあるならば、指名委員会・報酬委員会を強制されない監査・監督委員会設置会社の導入を前向きに検討するのかもしれません。
 しかし、社外取締役を確保することが、本当に資金調達にとって有利な事項なのでしょうか。
 あくまで私見ですが、ガバナンスと資金調達との間に相関関係があるようには思えないのです。たとえば、中国市場に資金が集まるのは、決して彼らのガバナンスが高いからではなく、利益獲得の可能性が高い(儲かる)からに過ぎません。
 要するに、投資家マーケットの需要・要望といったものについて、あまり過大評価してはならないと考えるのです。

(3)小括
 以上のとおり、企業や株主にとって本当にメリットある制度かは、甚だ疑問と言わざるを得ないというのが結論です。


(つづく)


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