菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

債務不履行による損害賠償の主観的要件について

2011-07-06 00:00:00 | 債権法改正
第2 債務不履行による損害賠償の主観的要件について
(取引実務の状況)

・ 以下では、「なす債務」に関し、意見を記したいと思います。
・ 実務では、不完全履行の要件事実に基づき、具体的事案を処理する取扱いが定着しています。すなわち、①履行の不完全(基本的債権発生原因事実および不完全履行)、②債務者の帰責事由、③損害の発生およびその数額、④不完全履行と損害との因果関係場合、の4要件を実務的に考慮します。
・ 不完全履行の要件事実としては、①客観的要件である「履行の不完全」とは別に、②「帰責事由」を検討しなければなりません。
・ 帰責事由の中心が債務者の「故意・過失」であると整理すれば、これを「主観的要件」と呼称しても差し支えないのでしょうが、ただし、「主観的要件」とは、履行不完全という客観的要件に対するものであって、(当然のことながら)心理状態としての「主観的過失」を意味するものではありません。
・ 実務において「帰責事由」とは、損害発生を予見・防止すべき具体的な行為義務違反という「客観的過失」のことと理解するのが一般的ではないでしょうか。


 以上は、経産省「債権法改正検討WG」委員として意見具申した概要を連載しています(6/08参照)。