菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

講義録: 法律上の会社とは(3) ~法人性と社団法人

2011-07-01 00:00:00 | 会社法学への誘い
 そして、この社団という特定の共同目的を達成するために結合した団体に、法が人格を与えたもの、これが社団法人であります。

 法律では、一般用語では違う意味なのに同じ言葉を使うことがありますが、この人格という用語もそうです。我々が日常生活で「あの人は人格者だ」と言うと、徳が高い、道徳観や倫理観があるという、何らかの価値観が入ってまいりますが、法律の世界ではそのような意味を含みません。権利を取得し、義務を負担できる、そういう器としての能力のことを人格といいます。これが権利能力です。

 皆様方は、生まれながらにして人格をお持ちです。たとえば、大学生協やコンビニでペットボトルのお茶を買うと、法律的には売買契約を締結したことになります。買主である皆様は、一つの権利と義務をそれぞれお持ちになります。「このペットボトルを私によこしなさい」という、売買契約に基づく目的物引渡請求権という権利を取得されます。また同時に、お茶の代金150円を店に支払わなければなりませんから、売買代金支払義務を負っていらっしゃる。このように権利を取得し、義務を負担できる能力のことを、法律では人格=権利能力というのです。

 ところが、一人一人、すなわち自然人には人格があっても、社団そのものには人格がありません。そこで、国家が法律の力によって、社団に人格を与えられます。法によって人格が与えるので、法人といいます。これが社団法人です。10人あるいは100人という人の固まりに対し、法律の力によって、あたかも一人の人間のように見立てたというのが法人なのです。

(次回に続く)