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犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
犬のこと、人の心身のこと、音楽や自作のいろいろなものについて

こわい

2017年10月30日 | 椰子の実の中
老母84ちゃい。
四人姉妹の末っ子で、かわいがられて育ってきた。
絵に描いたような末っ子甘えん坊の弱虫である。
二番目の姉さんが気の強い人だったので、よく
「泣き虫、毛虫、はさんで捨てろ」
といじめられたと言う。

穏やかな人だと思われているが、それはソトヅラであり、
耐えられる線が低いので、ちょくちょくヒステリックな声をあげる。
痛いこと、怖いこと、つらいこと、課題や困難にあうと、悲鳴をあげる。

私自身は、押し黙る子だった。
ワーワー騒いで主張したり、キーキー叫んで通そうとしたりしない。
「黙ってふすまに向かって立ってた。」
とは、母の友人の証言だ。
母とは違ったタイプの弱虫である。
私のことはさておき。



老母84歳、足の裏にウオノメができて痛い。
足の裏の皮の角質化が強く、厚さがあるので深く芯になる。
パーキンソン病の歩行困難というより、股関節の問題というより、
足の裏が痛くて、歩くのはおろか立つのもイヤなくらいだ。

この角質化は、年老いて始まったわけではない。
私が知る限り、母の足の裏の角質は厚い。
三十代にはすでにガチガチだった。
そのままにしておいたら悪化しただけのことだ。

手指の角質化もひどい。
手も足も、冷えている。
しかし、本人はそれを苦にしていない。
手足が冷たいという自覚が無い。
だからそのままにする。
そして悪化する。



角質化があまりひどいので、もう削るしかない。
皮膚科の先生に往診してもらい、足の裏の角質を、
爪切り鋏のような道具で、切ってもらう。

深いところを切る時が、痛い。
ヒーだのなんだのと悲鳴をあげる。
そして、
「こわい」
と言う。

すごく痛いことは、こわい。
というのはよくわかる。
私も、すごく痛いのはこわい。
しかし、角質部分を切っているので出血も無いし、
先生は上手だし、なんたってこれで楽になるんだ。
「こわい?なんでー?」
と、先生も不思議そうに聞き返していた。



月に一度、神経内科の主治医を受診している。
先生は、話のはじめに天気の話をしてくれた。
医師「台風こわくなかったですか?」
老母「むふふ・・・大島にくらべたら、なんでもない。」

以前、仕事で奄美大島によく行ってまして、あちらは台風の本場で
こっちより強いですから。
と、私は咄嗟に補う。



つまり、
経験したことの無いようなものは、こわいんじゃないだろうか。
そして、激しい痛みや激しい風雨のせいで、
その後に何かとんでもない事態が続くのではないか、と想像することが
こわさのもとではないだろうか。

おそらく、母も奄美で台風にあったときはこわがったのだろう。
それでも無事だった。
だから、今回の台風くらいの規模なら、そのときよりも弱いのだから大丈夫と思える。
こわくない。



つくづく、経験するということは大事だと思う。
また、経験が無くとも、おきていない事態を想像して心配し不安がることを
しなければ、「こわい」という感情にはなりにくい。
この程度のこわさは、自分で作り出しているものである。



経験したことのない事がこわい。
なるほど、だから人は、死ぬのがこわいのか。
大体の人が、死んだ経験が無い。だから、死ぬのがこわい。

そう、大体の人が。
たまーに、いっぺん死んだことのある人も、いるからねえ。


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