犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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生島マリカ『不死身の花 夜の街を生き抜いた元ストリート・チルドレンの私』2015

2022年11月16日 | よみものみもの
生みの母の死後、父は数ヶ月後に再婚する。
夫婦の暮らす上の階には来るな、と告げられる。
夫婦が寝室に入ってから、そっと行って、冷蔵庫の残り物を食べて
飢えを凌ぐ。

父から、家を出て行くように言われる。
新妻と子との生活を完全にするため、
先妻との子を排除したのだ。

夜の街で少女は生き抜く。
北新地から銀座、そしてまた大阪へ戻る。
夜の店で働く中で、大物と言える人物との出会いや
大きな巡り合わせがいくつも起きる。

死別、在日差別、鑑別所、無一文、夜の街、信頼、裏切り、死別、結婚、離婚、依存、
モデル業、自傷、出産、卵巣癌、子宮癌、結婚、離婚、強姦。

波乱の人生、
などという言葉では尽くせない。
人一人が、一人の女性が、心と体の全てをかけて生きてゆく。
時間の濃密さに、読んでいて唖然とする。

―――

 顔見知り程度の女の子から、
「あたし、自分自身にも色々あるけど、マリカを見ていたら、
あたしも生きていけるっていう気になったわ」
と声をかけてもらった。一緒にいた友人は、「なにあれ、どういう意味よ!」と
憤っていたが、あたしは嬉しかった。
 あたしみたいな人間でも、人に生きる勇気を与えたのか。

―――

 よく考えたら、あたしって、死ぬこと以外のこと、だいたい経験してるやん。
 一度死にたい。死のう。死んで、生き返りたい。
 そのためにも、あたしは自分の過去を書こうと決めた。いや、これ以上ここにいるためには、
書かずにはおれなかったからだ。

―――

 結局、一切合財すっからかんになるまでには、無職でも十年という月日が必要だった。(略)
 その間、今までの自分の人生を呪い、責め、悩み、苦しんだ。後悔し、自殺を考えるも、(略)
死ぬ事もできず、自分の中に救いを求めて文章を書き始めた。
 そして、岐阜にあるお寺に導かれた。(略)
 ここにきて、あたしには、猛烈に書きたいという強い欲求が芽生えた。あたしは、
まだ人に伝えたいことが、たくさん残っている。



中学にも通わなかった人だが、
筆致は力強く、確かである。
言葉とは習うものではなく、生きる中で身に付けるものなんだ。

得度を受ける部分はひどくあっさり書かれている。
興味深い。
「人に伝えたいこと」を今後また本にして欲しい。

終章「あたしは、母に似ていますか」
このクライマックスでは涙が出る。

youtubeでインタビューを見て興味を持ったのだが、
自身の手で書いた本を読んで、良かった。
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