
5歳まで住んでいた大塚の家は、
大正時代に建てられたもので、なんとも風情があった。
壁は羽目板、屋根は瓦葺き、玄関はガラリと引き戸で三和土は広く、
風呂場は土間にすのこ、二階への階段はもうひとつ梯段があって
女中部屋だか書生部屋だかに繋がっていた。
縁側の突き当たりに、レコードプレイヤーが置いてあった。
レコード盤を入れる棚の上に、プレイヤーが載せてあり、
まだ幼い私には手が届かず、操作できなかった。
3歳になるかならない頃、母が初めて私のためにレコードを買ってきて
くれたそうだ。
「おかあさんといっしょ」のLP2枚組。
ジャケットは幼女ふうの猫と、困り果てた表情の警官姿の犬。
レコードをかけると、私は興奮して室内を駆け回り、
ついには卒倒したと伝え聞く。
それほど、歌が好きだったのだろう。
※
好きな歌と、とても好きな歌と、さほどでもない歌とがあった。
この15年ほども後にはCDが登場して、「さほどでもない歌」は
どんどんトバサレるようになるが、当時はレコード盤だ。
トバシて聴くには、盤の上にそっと針を落とす、という
緊張するワザが必要だった。
おちびには到底無理だ。
同様に、とても好きな歌だけを繰り返し聴こうと思っても、無理なわけだ。
そこで、一枚の片面を聴く間にも、感情と集中力の波が相当ある。
それは気絶するほどの昂ぶりになる。
※
「ツッピンとびうお」は、とても好きな歌のひとつだ。
うたのおねえさんの歌唱は、なんとなくピッチが低くて気持ちわるい。
ということに、幼い頃もうっすら気付いていたような気がする。
しかし、伸びやかに歌う声は、まだ見ぬ太平洋を思わせた。
※
ウクレレ悲喜騙りは文字通り弾き語りでやってきたが、
今回は多重録音にしてみた。
録音風景は不細工なので、画像は自作の切り絵にした。
画面ではわかりにくいけれど、ヒレの色は一匹ずつ違う。
you tubeで見てくださいね~
https://www.youtube.com/watch?v=PW8A-XQ8Ihs
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