
門先に、あれこれの鉢植えに百円の値を付けて置いている。
庭で殖えるものだ。
勝手に殖えるものを売ってんだから楽な商売だろう
と思わないでくださいよ。
ひっこ抜いて捨てりゃ済むものを、
鉢に上げて体裁を整えて出すには、
百円以上の手間が掛かっているような気がする。
ーーー
その商売がだいたいにおいて
まともとは思えないのですよ
その辺で拾った石を売るなんて
売れるわけがないのを承知の上でしょう
ーーー
その辺に生えているものを売るなんて
いや、
「その辺に生えている」と思うのは、
自分の庭だから「その辺に」と思うのであって、
他人からしたら「その辺」ではないだろう。
※
玄関先で作業していると、
「おはようございます」
と挨拶された。
顔を上げると、知らない男性が散歩の途中という様子だった。
「前に買いました。
今まで4つほど買いました。」
おやおや。
今まで売れたのはほんの7つほどなので、
あなた実は大型顧客です。
「ありがとうございます。」
前にカキツバタの種を2包買って行った人とは
その場で話をしたし、
最初にクリスマスローズだったかを買って行った人とも
その後、会話をして菊を分けた。
ということは、
私は、私の苗屋で買い物した全員と会話をしている。
ふーむ。
4つ買ってくれていると聞いて嬉しかった一方、
なんだ半分はあんた一人かい
とも思った。
※
自宅の前は細い砂利道で、どこへ抜けるというでもない場所だから、
あまり通る人はいない。
「こっちの道に看板を出せば」とか、
「こっちの角に看板を出せば」とか言ってくれる人もいる。
できればそうしたいところだが、
公道に看板を置くのは問題だろうし、
なんせ毎日出したり引っ込めたりという手間を私は惜しむ。
ぐうたらやりたいのだ。
ーーー
売れないということは結果的に何もしていない
つまり寝ているのと同じようなものじゃありませんか
ーーー
おらほ調布に住む、漫画家つげ義春の『無能の人』の中のセリフだ。
ーーー
ようするにあんたはなんの役にも立っていない
存在価値がない
「ひどいことを言うね
結果はどうあれオレは一所懸命やっている
努力しているんだ」
「ふりをしているだけでしょう」
ーーー
しまった。
一所懸命やっているふうなことを、上に書いてしまったな。
自分を納得させるための言葉でしかないか。
※
特別養護老人ホームに入居した老母の使っていた枕カバー。
ほんのりうっすらとピンクだ。
これがちょうどいい。
縁取りを切り取って、
ドーサを引き、「苗 百円」と墨で書き、
木の棒を縫い付け、紐を結んで棒から吊るした。
門の代わりに立っている石に竹を結び、
筒の先に棒を差し込んだ。
こうすれば、棒から先を片付ければ良いので簡単だ。
左右対称の字で揃えた。
幟がひるがえっても、いつも同じに読めるだろう。
※
『無能の人』では、掘っ立て小屋の横に似たような
布切れの看板を立てている。
「石」
とだけ書かれている。
ーーー
「元手のかからねえ商売なんてみたことねえな
こういっちゃなんだが
そりゃダンナ売れませんぜ」
「けどねダンナ場所が悪いや
こうゆうのは骨董屋の店先に置くとかさ」
ーーー
友人Iに言われた。
「す~さんちの近くの家はミョウガくらい生えてそうだしな。
道一本違えばもっと売れるかもしれないね。」
そうなると、場所を貸してもらうとかいうことになる。
違う。
私は無能の人よりも一所懸命やる気が無いのだ。
夜も品物は門先に並べっぱなしである。
ーーー
「父ちゃん
迎えにきたよ
あの石あのままで盗られないの」
「うん
盗む奴なんかいないさ」
※
田川水疱が、庭で殖えた何か草花を門先に置いて、
「ごじゆうにおもちください」と書き、
そこに、のらくろの絵を描き添えたら、
その紙が持って行かれてしまった、という。
ままならないものだな。
庭で殖えるものだ。
勝手に殖えるものを売ってんだから楽な商売だろう
と思わないでくださいよ。
ひっこ抜いて捨てりゃ済むものを、
鉢に上げて体裁を整えて出すには、
百円以上の手間が掛かっているような気がする。
ーーー
その商売がだいたいにおいて
まともとは思えないのですよ
その辺で拾った石を売るなんて
売れるわけがないのを承知の上でしょう
ーーー
その辺に生えているものを売るなんて
いや、
「その辺に生えている」と思うのは、
自分の庭だから「その辺に」と思うのであって、
他人からしたら「その辺」ではないだろう。
※
玄関先で作業していると、
「おはようございます」
と挨拶された。
顔を上げると、知らない男性が散歩の途中という様子だった。
「前に買いました。
今まで4つほど買いました。」
おやおや。
今まで売れたのはほんの7つほどなので、
あなた実は大型顧客です。
「ありがとうございます。」
前にカキツバタの種を2包買って行った人とは
その場で話をしたし、
最初にクリスマスローズだったかを買って行った人とも
その後、会話をして菊を分けた。
ということは、
私は、私の苗屋で買い物した全員と会話をしている。
ふーむ。
4つ買ってくれていると聞いて嬉しかった一方、
なんだ半分はあんた一人かい
とも思った。
※
自宅の前は細い砂利道で、どこへ抜けるというでもない場所だから、
あまり通る人はいない。
「こっちの道に看板を出せば」とか、
「こっちの角に看板を出せば」とか言ってくれる人もいる。
できればそうしたいところだが、
公道に看板を置くのは問題だろうし、
なんせ毎日出したり引っ込めたりという手間を私は惜しむ。
ぐうたらやりたいのだ。
ーーー
売れないということは結果的に何もしていない
つまり寝ているのと同じようなものじゃありませんか
ーーー
おらほ調布に住む、漫画家つげ義春の『無能の人』の中のセリフだ。
ーーー
ようするにあんたはなんの役にも立っていない
存在価値がない
「ひどいことを言うね
結果はどうあれオレは一所懸命やっている
努力しているんだ」
「ふりをしているだけでしょう」
ーーー
しまった。
一所懸命やっているふうなことを、上に書いてしまったな。
自分を納得させるための言葉でしかないか。
※
特別養護老人ホームに入居した老母の使っていた枕カバー。
ほんのりうっすらとピンクだ。
これがちょうどいい。
縁取りを切り取って、
ドーサを引き、「苗 百円」と墨で書き、
木の棒を縫い付け、紐を結んで棒から吊るした。
門の代わりに立っている石に竹を結び、
筒の先に棒を差し込んだ。
こうすれば、棒から先を片付ければ良いので簡単だ。
左右対称の字で揃えた。
幟がひるがえっても、いつも同じに読めるだろう。
※
『無能の人』では、掘っ立て小屋の横に似たような
布切れの看板を立てている。
「石」
とだけ書かれている。
ーーー
「元手のかからねえ商売なんてみたことねえな
こういっちゃなんだが
そりゃダンナ売れませんぜ」
「けどねダンナ場所が悪いや
こうゆうのは骨董屋の店先に置くとかさ」
ーーー
友人Iに言われた。
「す~さんちの近くの家はミョウガくらい生えてそうだしな。
道一本違えばもっと売れるかもしれないね。」
そうなると、場所を貸してもらうとかいうことになる。
違う。
私は無能の人よりも一所懸命やる気が無いのだ。
夜も品物は門先に並べっぱなしである。
ーーー
「父ちゃん
迎えにきたよ
あの石あのままで盗られないの」
「うん
盗む奴なんかいないさ」
※
田川水疱が、庭で殖えた何か草花を門先に置いて、
「ごじゆうにおもちください」と書き、
そこに、のらくろの絵を描き添えたら、
その紙が持って行かれてしまった、という。
ままならないものだな。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます