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犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
犬のこと、人の心身のこと、音楽や自作のいろいろなものについて

苗屋を開店した

2022年12月26日 | うつろい
門先に、あれこれの鉢植えに百円の値を付けて置いている。
庭で殖えるものだ。

勝手に殖えるものを売ってんだから楽な商売だろう
と思わないでくださいよ。
ひっこ抜いて捨てりゃ済むものを、
鉢に上げて体裁を整えて出すには、
百円以上の手間が掛かっているような気がする。

ーーー

その商売がだいたいにおいて
まともとは思えないのですよ

その辺で拾った石を売るなんて

売れるわけがないのを承知の上でしょう

ーーー

その辺に生えているものを売るなんて

いや、
「その辺に生えている」と思うのは、
自分の庭だから「その辺に」と思うのであって、
他人からしたら「その辺」ではないだろう。



玄関先で作業していると、
「おはようございます」
と挨拶された。
顔を上げると、知らない男性が散歩の途中という様子だった。

「前に買いました。
今まで4つほど買いました。」

おやおや。
今まで売れたのはほんの7つほどなので、
あなた実は大型顧客です。
「ありがとうございます。」

前にカキツバタの種を2包買って行った人とは
その場で話をしたし、
最初にクリスマスローズだったかを買って行った人とも
その後、会話をして菊を分けた。

ということは、
私は、私の苗屋で買い物した全員と会話をしている。
ふーむ。

4つ買ってくれていると聞いて嬉しかった一方、
なんだ半分はあんた一人かい
とも思った。



自宅の前は細い砂利道で、どこへ抜けるというでもない場所だから、
あまり通る人はいない。

「こっちの道に看板を出せば」とか、
「こっちの角に看板を出せば」とか言ってくれる人もいる。
できればそうしたいところだが、
公道に看板を置くのは問題だろうし、
なんせ毎日出したり引っ込めたりという手間を私は惜しむ。
ぐうたらやりたいのだ。

ーーー

売れないということは結果的に何もしていない
つまり寝ているのと同じようなものじゃありませんか

ーーー

おらほ調布に住む、漫画家つげ義春の『無能の人』の中のセリフだ。

ーーー

ようするにあんたはなんの役にも立っていない
存在価値がない

「ひどいことを言うね
結果はどうあれオレは一所懸命やっている
努力しているんだ」

「ふりをしているだけでしょう」

ーーー

しまった。
一所懸命やっているふうなことを、上に書いてしまったな。
自分を納得させるための言葉でしかないか。



特別養護老人ホームに入居した老母の使っていた枕カバー。
ほんのりうっすらとピンクだ。
これがちょうどいい。

縁取りを切り取って、
ドーサを引き、「苗 百円」と墨で書き、
木の棒を縫い付け、紐を結んで棒から吊るした。
門の代わりに立っている石に竹を結び、
筒の先に棒を差し込んだ。

こうすれば、棒から先を片付ければ良いので簡単だ。

左右対称の字で揃えた。
幟がひるがえっても、いつも同じに読めるだろう。



『無能の人』では、掘っ立て小屋の横に似たような
布切れの看板を立てている。

「石」

とだけ書かれている。

ーーー

「元手のかからねえ商売なんてみたことねえな
こういっちゃなんだが
そりゃダンナ売れませんぜ」

「けどねダンナ場所が悪いや
こうゆうのは骨董屋の店先に置くとかさ」

ーーー

友人Iに言われた。
「す~さんちの近くの家はミョウガくらい生えてそうだしな。
道一本違えばもっと売れるかもしれないね。」

そうなると、場所を貸してもらうとかいうことになる。
違う。
私は無能の人よりも一所懸命やる気が無いのだ。

夜も品物は門先に並べっぱなしである。

ーーー

「父ちゃん
迎えにきたよ

あの石あのままで盗られないの」

「うん
盗む奴なんかいないさ」



田川水疱が、庭で殖えた何か草花を門先に置いて、
「ごじゆうにおもちください」と書き、
そこに、のらくろの絵を描き添えたら、
その紙が持って行かれてしまった、という。

ままならないものだな。

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