犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

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原因と結果

2018年08月31日 | 椰子の実の中
ものごとには必ず原因が有る。
と、インド人は考える。
と、サンスクリット文法の先生が解説する。

結果としての現実が目の前に有って、
その原因は何だったのじゃらほい、と考える。
考えた末にひねり出す'原因'というのは、あくまで考え出したものであって、
その'原因'が現実の結果に至る様は誰も見たわけではない。

間違っているかもしれない。
でも、ある一面から見た場合だと、さも本当の事のように見える。
でもでも、ただの思い込みなのかもしれない。

目の前の現実にとっての原因を探ろうとして、このように帰納的に考えると、
間違うおそれがある。



鍼灸治療なんぞやっていると、こういう問題によくぶつかる。
目の前の症状が、なぜ起きているのか、原因をあれこれ考える。
他の症状を集めてみたり、経緯を見てみたり、様々な角度から証拠集めをして、
原因を探る。

原因が分かれば、対処ができる。
原因を解消するような治療を施す。

ここで、原因を見誤っていれば、どんなに治療行為をしたって、
的外れなのだから効果が出るわけがない。



90年代くらいに、ゲイになるのは胎内でホルモンシャワーを充分に浴びていないから、
といった説が有った。
同性愛は脳に原因が有る、という説である。

自分はなぜこう(同性愛)なんだろう、と思い悩んでいた人にとって、
これは一つの答えとなり得た。
しかし反面、「同性愛者は脳の異常が有る」というレッテルを貼ること(スティグマ)にもなる。
原因が有るならそれを取り除くというふうに、「治療」の対象とされる、
ということも起き得る。
これがいけない。

それにそもそも「男性同性愛者は完全に男性になっていない者」と扱っているところに
間違いが有る。

胎内でのホルモンシャワーが不充分ということが原因で起こることに、
性分化疾患が有る。
性分化疾患はそれこそ原因も結果も様々で、何十種類もの病態が知られている。

ゲイ化ホルモンシャワー説を取ると、性分化疾患の人はゲイであるという
間違った結論も導いてしまう。



見てもいないことを推測だけで言ってはいけない。とは言っていない。
多くの哲学は成果をあげてきたし、
見ていないことを推論できるから、人間は科学を発展させてきた。
分子、原子だのニュートリノだの、物理学でも天文学でも生物学でも、
見えない物の存在を推測して、実験で実証してきた歴史が有る。

また、人権的・社会学的な見方や、倫理的・人道的な捉え方や、
自然科学的・生理学的な観察では、視点も基準も異なると思う。
良いか悪いかは別として、社会や文化のあり方が科学的な視点に影響を与えることは
これまた歴史を見れば明らかだ。



何が正しいか、は社会や時代で変わる。
けれど、何が本当か、というのは変わらぬ事実だと思う。
自分の観察が、文化や思想に左右されないわけもないとは思うけれど、
慎重でありたい。

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