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映画ブロガーら有志23名による「10年代映画ベストテン」発表!

「商店街映画祭ALWAYS松本の夕日」第10回記念 極私的思い出の歴代10作品

2018-11-26 18:45:58 | 自主映画関連
さる11月23〜25に開催された商店街映画祭がついに第10回を迎えました
10回続く映画祭って中々ありませんから、大したものだと思います
第一回は「松本の商店街で映画を撮ってもらう」と言うコンセプトで、第2回から商店街を描いた映画なら全国どこからでもと変わり、やがて各地の映画祭を席巻する傑作が続々と応募されてくるようになったり、海外から応募があったり、あるいは商店街映画祭のために撮り下ろしてくれる人が出てきたり、と振り返ると色々な歴史があります。

今後の映画祭のあり方についての議論は一旦置いといて、10回を記念してこれまでの入選80作をすべて観てきて、入選外の作品もかなり観てきた私が過去の商店街映画祭の作品の中から、個人的ベスト3と思い出の作品7作「商店街セブン」の合わせて「商店街10」を挙げてみたいと思います。
もちろん第一回グランプリ受賞の私の作品は外しています…

ベスト3
1位 やわ (第5回グランプリ 佐藤絢美)
2位 海辺の町編(第6回グランプリ 佐々木想)
3位 替わり目(第9回グランプリ 木川剛志)

商店街セブン
金魚姫の恋 (第4回入選 大池雅)
テンロクの恋人(第4回グランプリ 渡辺シン)
きのうのあと (第6回入選 麿)
悪夢 (第6回入選 FM長野賞 信州大学教育学部附属松本小学校6年西組)
日はまた昇りくりかえす(第2回入選 古川倫大)
村崎十郎パート2 (第4回 串田賞)
Hako-Musume (第5回入選 宮川健太郎)

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解説
思い出の7作品、題して「商店街セブン」

【Hako-Musume (第5回入選 宮川健太郎)】
役者や写真家としての彼について語れる人は沢山いるかもしれないが、映画作家としての彼を語れるのは私くらいだと思ったから、彼について書き残す使命感もあって商店街10に選出しました
〆切ギリギリか、数分遅れで持ち込まれた記憶がある。その時は私も審査に加わっていて一通り作品を見終わった後で、もう一本来ましたけど観ます?みたいな感じでみんなで見た、ああ、あいつの映画か、どうせ大したことないんだろう、と失礼なことを思っていたら非常に良い映画で、滑り込み入選を果たした。
徹頭徹尾フェイクドキュメンタリーであり続け、観ているうちに騙されてもいい気になってきて、もしかしたら「箱娘」は本当に縄手商店街にいるのかもしれないと思わないでも無かった。
ダイスケ、君は自分で思ってる以上に才能あったんだよ。少なくとも私は君の映画に心がすこしざわつかされたんだ。もっと沢山の人達をざわつかせる事が出来たはずなんだ。
ちなみに翌年「箱娘」のパート2が出品されたが、あの映画がなぜ評価されたのか全くわかってなかったのか、箱娘の内面に迫るフィクションドラマ仕立てになってて…全然面白く無かったんだなー


【村崎十郎パート2(第4回 串田賞 新谷聡)】
正式なタイトル忘れました。
シリーズ中1番面白かったのではないかと思いますが、きむらまさみの本格スクリーンデビュー作で、私もこの作品のお陰できむらまさみと仲良くなったので、そういう私的理由でランクイン。


【日はまた昇りくりかえす (第2回入選 古川倫大)】
第2回の応募作。この頃は監督を招いての打ち上げがなかったこともあり、たしか監督は来場されていたような気はするが、お話しする機会は無かった。その後もどこかの映画祭で会うということも無いまま。
特に賞にも絡まなかったのだけど、なぜ覚えているかといえば、一つは松本圏内の作品がほぼメインだったこの時期に、第2回にして初めて東京から応募された作品だったということ。しかもこの映画祭を知っての撮り下ろしだったと思う。映画祭が全国区になる最初の一歩の作品だった。
もう一つは作品自体の魅力。市川準の映画のような台詞に頼らずある商店の何年間かを綴っていく映像詩のような作風に、決して大傑作とは言えないけれども、今こうして思い出の10本に選出していることからもわかるように、心に引っかかるものがあった。


【悪夢 (第6回入選 FM長野賞 信州大学教育学部附属松本小学校6年西組)】
松本の小学生たちに1日だけの簡易映画セミナーを開いた。座学なのであまりためにはならなかったかもしれない
でもみんなは一生懸命作った映画を商店街映画祭に出品してくれた
それだけで十分うれしかったのだが、映画の内容もすごかった
子供らしく、冒険ファンタジーっぽいことやっても全然OKなのに、みんなは「いじめ問題」に真正面から堂々とぶつかった社会派映画を作った
タイトルが「悪夢」とは。
第10回で平林君が「色々な映画のタブーに挑みました。夢落ちとか」と答えていたが、松本の小学生たちはその何年も前に夢落ち(しかもタイトルでネタバレ)に挑んでいたのだよ。
けれどこの映画の夢落ちは、悪くなかった。この恐怖しか感じない突然みんなから無視されるという状況が、せめて夢であってほしいと切に願いながら観ていたので、むしろいい着地点だった。悪夢を機にいじめの被害者や加害者に対して考え出すという、登場人物の成長にもつながっていた。
ただ楽しいから、映画が好きだから、映画を作るのではない。明確な今映画で訴えるべきことは何かと、クラスのみんななりに考えての結論だったのだろう。
カメラはお世辞にもうまいとは言えないし、台詞は聞き取りにくいし、編集も雑だし(しかもソフトの不調なのか場面転換時に妙なノイズみたいなのが入って、それはかえって効果的だった)、技術的には全然未熟ではあったが、その程度の理由で入選から落とすにはもったいないくらいの映画の作り手としての使命感が作品にあふれていた。それは私に、ただ映画と遊んでいるだけではダメだと気づかせてくれた。自分が映画の中に社会性を入れるようにしたのは、この作品を見た後だし、もしかすると影響を受けたのかもしれない。


【きのうのあと (第6回入選 麿)】
ストック作品に条件に合うのがあるから出すのは、もちろん全然悪いことではないのだけど、この映画祭のための撮り下ろし作品はやはり好感度高い。その意味では「松本商店街物語」も横内さんの全作品でもいいんだけど、遠く富山の地と映画祭を通して繋がったのは思い出深い
たしか監督の麿さんが、第5回の映画祭で「あさって」を入選させ(その「あさって」は私の「罪と罰と自由」が富山短編映画祭で上映された際に、麿さんと知り合ってその縁でご出品頂いた)、その時のグランプリ作「やわ」に友人の渡辺シンさんが制作に関わっているのを知って対抗心燃やして作ったものと記憶している。
それだけが制作の動機ではないだろうけれど、映画祭出品が映画作家の次作品制作に直接間接に貢献するという、理想的な形をそこに観た気がして。
そうした制作上の経緯だけでこうしてあげているわけではなく、作品にあふれる空気感もとても心地よかったから


【テンロクの恋人 (第4回グランプリ 渡辺シン)】
全4話トータル2時間くらいの作品だが、商店街映画祭入選したのはその第1話。ちゃんと全話観た商店街映画祭関係者って私だけではないのだろうか。
だから全話通しての評価というのは掟破りかもしれないけど、私的ベストなんだからどんな理由でも良いでしょう。2話3話の演出のうまさ、4話の大スペクタクルはやはりよい。
全話通すとシンプルに面白い長編なのでいつか商店街映画祭でテンロクの全話上映をやってほしいと切に願います。


【金魚姫の恋(第4回入選 大池雅)】
大池君の作品は他にもいくつか観ているが、この作品はこの時点における彼の最高傑作だった。
女性に恋する女性の話。今思えば私がLGBTを題材にした映画の企画を考える少し前だ。
喋り倒すようなナレーションで心情を綴るのは映画的演出とは言えないかもしれないけど、女の子の心から溢れ出さんばかりの気持ちは表現できていた。
そして何より、主人公が恋するダンサーの女性の、ダンスの美しさ。大池君のカメラマンとしてのセンスと合わさって、官能的な美しさだった。女の子が同性に恋をしてしまうことに説得力を与えていた。

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個人的商店街映画祭ベスト3

【第3位 替わり目(第9回グランプリ 木川剛志)】
主催者でもないのになんですが、商店街映画祭はこういう作品を待っていたというような、この映画祭のための作品だと思い、第9回の上映中ずっとこの作品がグランプリとって欲しいと思っていたら、やっぱり思いは伝わったのか見事すぎるグランプリ。
商店街に行きたくなる映画。商店街と共に生きる噺家さんたちの物語。さらに言うとひたすら落語を喋る噺家さんを撮りっぱにするだけで小細工弄した映画よりはるかに映画的興奮を味わえるという発見


【第2位 海辺の町編(第6回グランプリ 佐々木想)】
なんといいますか、純然たる映画としての力で言えばこの11年間で最高だったのではないでしょうか。客観的に見てこれが商店街映画祭歴代作品で映画としては最高じゃないかとすら思ってます。この映画を輩出したことは映画祭の誇りと思っていいと思います。
訳あって東京から海辺の町の商店街に戻ってきた女と、逆に海辺の町を出て東京に行きそして多分戻ってこない2人。悲しみが染み渡るラスト。
海辺でヌンチャク振り回す長回しは歴代商店街映画祭作品史上のベストシーンであると思ってます。
ちなみに「海辺の町編」の「編」の部分が疑問に思うかもしれませんが、実は4話くらいのオムニバスの一編でして、ただ商店街に絡む話がこれだけでした。これの全話上映もテンロクと同じくやれないもんかなー
ところで、審査会でのことも言わせてください。私は他の審査員の皆さんには審査会が終わるまで佐々木さんがその年のカンヌ短編部門にノミネートされていたことは黙っていました。だから「海辺の町編」はガチで評価されたのです!


【第1位 やわ(第5回グランプリ 佐藤絢美)】
映画としての出来で言うと色々とアラはあるのだけど、何年も経った今でもやっぱりこの映画が好きすぎて、「海辺の町編」や「替わり目」を差し置いてこれを1位に推す衝動を抑えられませんでした。この作品がとても好きなのです。
テンロクの翌年に、商店街映画祭に狙いを定めて制作され、商店街の過疎化、跡取り不足を物語のベースに置き、父と息子の話という共感しやすい家族の映画にしておきながら、その実監督の趣味性全開で妖怪愛が色々な商店街映画要素を差し置いて強く出てくるという
商店街映画祭のための作品だけど、そこにそれ以外の要素を色濃くぶっこんでくるところが好きなのです。
商店街映画祭を利用して映画で楽しみ抜いたかのような制約と自由を両方武器にしたかのような。
とても真面目な「替わり目」や「海辺の町編」に対して絶妙な加減でふざけてるところが好きなのです。
後半の妖怪と出会った主人公がカメラ片手に妖怪を追いかけていつのまにか商店街どころではなくなってしまうその展開。ラストも最高。
この佐藤絢美さんという人は天才じゃないのか!?と思ったのだが、少なくとも私の耳には彼女が新作を撮ったという情報は入ってこない。関西の皆さん、また絢美さんを焚きつけて新作作らせてくださいよー

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ここまで書いてさんざんお世話になった古本さん、小原さん、横内さんの作品を挙げていないことに気づきましたが、どこか別に語る機会もあるでしょうってことで許してください。

今回挙げた他にも
「ラブラブ商店街なわて」「親指ジョニー」「傲慢なる施し」「CONNECT」「ノリクラセブン」「木曜日午後8時」「マイツイートメモリー」「松本商店街物語」「私以外の人」「サトウくん」「町のお肉屋さん」なども大好きですよー

あと伝説的入選外作品として
「よ。」(横内究)
「日常」(早田和重)
も挙げておきます。

それではまた、映画で会いましょう

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最後に私の作品の宣伝
2016年作品「唯一、すべて」
2019年1月26日に愛知県大府市にて行われる大府ショートフィルムフェスティバルに入選し、上映されます
唯一、すべて予告編

それから、長編映画「巻貝たちの歓喜」2019年春完成予定で、ただ今編集中です。
巻貝たちの歓喜 予告編

ではでは

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