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【映評】サンシャイン 歌声が響く街 [♪元気出すしかないじゃない♬]

2014-11-26 18:54:30 | 映評 2013~
62点(100点満点)
2014年8月17日、有楽町ヒューマントラストシネマにて鑑賞

贔屓のイギリス映画。でもどっちかっていうとスコットランド映画と言うべきか。
今年(2014年)連合王国からの独立の是非を問う住民投票が行われたスコットランド。
この映画でもイギリス軍を除隊して故郷のスコットランドに帰ってきた主人公が妹から女の子を紹介されるが、イングランドっ娘と聞いて表情が曇る場面があり、やっぱりそういう感情ってあるのかなと思った。
ただし主人公はそのイングランドっ娘と付き合うし、主人公と一緒に除隊した親友は最後に“イギリス”軍に戻って“イギリス”のため外国での軍事行動に就く。
独立反対派の映画だったのかもしれない。
監督はイングランド人だ。デクスター・フレッチャーさん。俳優でもあり『キックアス』にも出ている。どの役だ?

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本編が始まってすぐの場面はアフガニスタンの戦場を移動する兵員輸送車。緊張した面持ちの兵士たちが歌を歌っている。そして炸裂音がして舞台はスコットランドへ。
こういうその後の展開とギャップのある導入は好きだ。

物語は、スコットランドで暮らす一家、父、母、兄、妹、そして兄の親友(妹の恋人)、兄の恋人、そして父の昔の浮気相手の娘の7人で繰り広げられる。ファミリードラマである。
家族が離散する物語とも言えるが悲壮な話ではなく離れてもなお失われない家族の絆を描いている。倒れた父を思いアメリカに行くことを断念した娘を、父が送り出すところはとても感動的であった。

しかし、物語的に果たしてそれでいいのか?と思う所も多々ある。
かつての浮気相手との間に娘が出来ていたことがわかり長年連れ添った父と母は離婚寸前。
あの娘の面倒は俺がみる、それが務めだ、という父の気持ちはともかく、最終的にそんな父を認める母ってのは物語的にどうなんだろ?
母のほうこそ歌いながらアメリカにでも旅立てばよかったのに。
父が都合のいいタイミングで急病で倒れたりするから話が無理やり「いい話」に持っていくしかなくなったのでは?

そして一番納得いかないのが、妹の恋人の扱い。プロポーズするも、妹はアメリカに行く夢があるから断ってしまい、早い話がふられてしまって、彼は軍隊に戻るという展開。
家族の物語と考えたとき、家族の一員でない彼だけが、絆が途切れるように遠い異国の地の戦闘に向かうというのはあまりに非情ではないか?
仕事にもつけず恋人にもふられた彼が自暴自棄になって軍隊に戻っただけのように思えてならない。
戦友との約束があったわけでも、国のためテロリストと戦おうと決意したわけでもない。私は妹の恋人の結末についてはどこをどう感動していいのかさっぱりわからなかった。
まして、後方任務とかでなく思いっきり最前線。殺されるかもしれないし、彼が撃ち殺す敵兵にだって家族がいるだろうし、家族の絆を描いた映画の結末があれでよいのか?
というより別に家族の絆を描いた映画ではなく、スコットランドの今をそのまま描いただけなのかもしれない。
だったら「とにかく元気が出る」とかいう宣伝文句はまったくの的外れだ。

けれどもミュージカルのいいところは、どんなにストーリーに納得いかず、モヤモヤした思いに囚われたとしても、明るい楽しい曲を大勢で歌って踊れば、なんか全部解決した気になれるところだ。
ラストの駅前広場みたいなところで大勢が歌うシーンはなんか知らんけど泣きそうになった。
一般市民を集めたくさい素人感のあるエキストラたちだが、スコットランドの楽しい人々の「リアル」がにじみ出ている(なんつってイングランドから集めたエキストラだったらズッコケだが)。
どんなにつらくても、理不尽でも、不公平でもとにかく笑って歌って踊ろう。
そう言ってるように感じるラスト。いい悪いはともかく、そう感じたから泣けてきたのかもしれない。

『サンシャイン 歌声が響く街』
監督:デクスター・フレッチャー
脚本:スティーブン・グリーンホーン
出演:ピーター・ミュラン、ジェーン・ホロックス、ジョージ・マッケイ、ケビン・ガスリー

---以下、鑑賞直後のTwitterフラッシュ映評---

@shinpen: 「サンシャイン 歌声が響く街」シナリオには色々不満はあれどラストは泣きそうになった。素人丸出しなエキストラであっても大勢で歌い踊るシーンはいいな。

@shinpen: 「サンシャイン 歌声が響く街」唐突に始まる歌と踊り、一発で恋に落ちる男女など正統派ミュージカルでありつつも、群像劇にしたのは失敗だったかも。せっかくわかりやすい個々のエピソードが散漫になり、色んなエピソードを歌で語るのに尺を取りすぎて前半はちょい退屈

@shinpen: 「サンシャイン 歌声が響く街」
けれどもミュージカルとしてより、小津調ホームドラマの延長と捉えると楽しめる。家族が離散する話。離散したからといって絆は薄れない。さりとて近くで長くいたからといっても、やはり個人の集合体。秘密があり些細なことで崩壊の危険をもつ家族。家族映画として評価

@shinpen: 「サンシャイン 歌声のよ響く街」
軍隊のある国では人生の選択肢として軍隊に入り外国で戦う自由がある。
イギリス軍に撃たれた敵兵にも家族がいるというところまで踏み込めば家族映画としては完璧だった。散漫さには拍車をかけるが。戦場をミュージカルにするくらいの吹っ切りも欲しいところだ


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自主映画制作団体 ALIQOUI FILM
最新作「チクタクレス」

 小坂本町一丁目映画祭Vol.12 入選
 日本芸術センター映像グランプリ ノミネート

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