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エージェント・ウルトラ (プログラムピクチャーの鏡)

2016-02-23 20:07:05 | 映評 2013~
[78点]
久しぶりにいい意味で志の超低い、低予算のアクション映画を堪能できた。
クライマックスの決戦の舞台がホームセンターというところ、偶然ついこないだ録画で観た「イコライザー」と似ている(さらにCIAの大物をビル・プルマンが演じている点も奇妙な一致だ)
記憶の底に封印されていた諜報員としての能力が覚醒するあたりは、完全にジェイソン・ボーンのパクリだろう。
いろんなスパイ映画の要素寄せ集めて若い男女のラブからめて、ノリノリ音楽でパッケージしようぜ。予算無くて世界を股に的な物語無理だからアメリカの小さな町の中だけで済むように脚本書いてくれ。そんな軽いノリだ。
でも楽しいのは変に格調高い雰囲気出さないキャラクター設定のおかげだ。
例えば「イコライザー」は主人公が読書家でインテリっぽくて亡くなった妻を今でも愛していて人生経験豊富そうで仕事ができて頼れる奴。そんな上司にしたい人ランキング一位に来そうな設定でしかも戦闘能力も高いなんてすご過ぎる奴でかえって嫌味くさくなったのだ。
なんだかデンゼルが自分のイメージ守るのに必死な感じもした。
対して「エージェントウルトラ」の主人公は真逆だ。若い、ちょいブサイク(「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ)、見るからに頭悪そうで実際悪い、職業はコンビニのバイト、自作漫画の創作が趣味なオタクで、ヤク中、というダメな奴ど真ん中なキャラなのに、戦闘能力だけ超高いというギャップがよい。
バカバカしすぎて突っ込む気も起きない。
ジェシー君はソーシャルネットワークでアカデミー候補になったというのにこんなダメ人間役なんかやっていいんだろうか?(もっとも「ソーシャルネットワーク」で彼が演じたマーク・ザッカーバーグも相当なダメ人間な描かれ方だったから、そのキャラの延長にすぎないのかもしれない)
そして、次々とCIAが作った強化人間の刺客たちが送られてくる。アメリカ映画なのにCIAが敵ってかなりシビれる。
愛していた恋人は当然のようにCIAの回し者で、なわけねーだろな展開ばかりが目白押し。
そうはいってもアクションは容赦ない。ばんばん殺し、血が吹き出し、爆発も本気臭むんむん。アメリカのコメディってアクションシーンが本気すぎるところが大好きだ。
敵(この場合CIA)に捕らわれたヒロインを助けるという定番すぎる展開は期待通り。
敵の刺客も主人公に歯を折られることで執着が生まれ、ビジュアル的にもわかり易くなり、因縁深まる二人の最終決戦は物語のテンションも高めていく。
どっかで見た展開の寄せ集めばかりだが、まとめ方がとっても上図で、飽きさせない。(CIAの強化人間軍団が弱すぎるところは気になるが、ヒロイン救出を盛り上げるためのかませ犬にすぎない奴らだから仕方ない)
この映画を見て人生にプラスになるものは何もないと断言できるが、2時間の間確実に楽しい時間を過ごすことができる。

ところでCIAの描写だけどミスった部下を即撃ち殺す上官とか、見ていてとても楽しいけど、普通に考えたら恐怖の軍事独裁国家の描き方だ。
もちろん政治やCIAの批判する意思ゼロなことぐらいバカでもわかるので、CIAもいちいち「映画でのCIAの描き方が事実に反するので上映の差し止めと描写の改善を要求する」みたいな抗議はしないのだろうな。
とはいえアメリカ人って自分たちの国の政府や軍隊をどんなもんだと思っているのだろう?
これが日本で自衛隊の幹部が兵士を撃ち殺したりする場面なんか撮ったらものすごく批判されそうだけど。

エージェント・ウルトラ
監督 ニマ・ヌリザデ
脚本 マックス・ランディス
出演 ジェシー・アイゼンバーグ、クリステン・スチュワート(かわいい)





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