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エル ELLE [監督:ポール・ヴァーホーベン] 沈黙しないヴァーホ流信仰と暴力

2017-10-27 08:56:01 | 映評 2013~
88点

人を嫌な気分にさせることに関しては右に出るものがアルモドバルくらいしかいないポール・ヴァーホーベン
ハリウッド時代も面白かったけど、ヨーロッパに戻ってからの方が映画作家としてハリウッドでは超えられなかった一歩を踏み出した気がしてよかったと思う。

暴力暴力とサスペンス、冷酷だが欲望に対しては計算しない、エルは悪なのにめんどくさい女なのに、それでも魅了されてしまう。小悪魔じゃない、普通に悪魔だ

ヴァーホーベンの女好きはホンモノだ
若い美人が好きなだけじゃない。熟女にもきちんと欲情している。
女を徹底的にいじめながら、女に世界を破壊するほどの力を与えている。拷問されるキリストのように

そうだ、この映画は信仰の映画でもあった。
強い信仰心が狂気を生んでいる。どんなに善なる力であっても強すぎればなにかを壊す。
レイプ犯は割礼しているというエルの証言からおそらくユダヤ人と思われる。だが彼の妻は敬虔なカトリックのようだ。妻との何不自由ない幸せな生活はしかし自分を押し殺す生活であり、狂気を呼ぶのだ。
エルの父も敬虔なカトリックのようだった。そして凶行におよぶが、その時少女だったエルの目に父の行為はどう映ったのか。

とは言いながらもラストシーンで信仰に希望を見出そうとするところは、それでも人は何かを信じて生きていかなくてはならない、と訴える

エルはレイプされることで心に傷を負ったのではない。少女時代に心の底に宿った狂気が吹き出すきっかけになったのだ。
徹底的に周りの女たちを踏みつけ、男たちを潰していくエル
ちょっと美人のおばあちゃんの開いた扉は世界を破壊して再生させる
暴力よりも危険なものをポール・ヴァーホーベンとイザベル・ユペールの2人が描き出したのだ

「エル ELLE」
9/10 日比谷の映画館で鑑賞
監督:ポール・ヴァーホーベン
出演:イザベル・ユペール、ロラン・ラフィット
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