【個人的評価 ■■■■□□】(6段階評価 ■□□□□□:最悪、■■■■■■:最高)
理論でも直感でもなくまず筋肉を動かす孤高のクリエイター・シルヴェスターの新作。
小さいながらも自慢のイタリア料理屋で、自分の昔話を客に語って聞かせているだけだった元ボクサーが、あの有名なロッキーのテーマにのってほんの3~4分練習したらもう最強のボクサーとして復活。そんな豪快きわまるスポコン映画であった。トレーニングシーンは、ほんとあの3~4分だけだったな・・・
現役世界チャンピオンに対する作戦はたった一つ「パンチを重くする」
そ・・・そんだけか・・・
それと、どんだけ殴られても前に進み続けること
シリーズ全体に言えることだが、精神論ボクシングを貫き通す当たりが潔い。
テクニックとか作戦とか、そんな難しいことどうだっていいんだよ。最後に立ってりゃいいのさ!!っていうシルヴェスター流ストーリー。
「懐古趣味だろうと客は入る」とか「とんだ茶番です」とかいった感じの自虐的台詞も堂々と使い、「夢を諦めないことの何が悪い!!」とかロッキーの台詞なのか、シルヴェスターの本音なのか判んないところがまた胸を熱くする。
ライセンスの再交付は認めませんというスポーツ委員会みたいなところのお歴々に、俺から何もかもとりあげるな!!と一席ぶつところは、独立宣言起草の地フィラデルフィアを舞台に幸福を追求する権利云々を語って深みを与えようとしたのだろうが、どっちかと言えば、ロッキー第六作目の撮影GOを取り付けるため20世紀FOXとMGMとコロンビアの重役たち相手に唾はきながら熱く大演説しているシルヴェスター・・・って感じの企画会議の情景を勝手に想像し、もっと深みを感じてしまったのだった。
再びリングに上がる老いたロッキー・バルボアの姿と、再びロッキーの看板掲げて監督・脚本・主演で映画界に乗り込むシルヴェスター・スタローンの姿があまりにかぶる。だからこその作品そのもののデキを越えた感動がたしかにある。
ただし、ロッキーのテーマにのったトレーニング・シーンに挿入されるハサミ入りまくりの「肉を叩く」や「卵一気飲み」はファン心理を判っていない様に思える。特に卵は・・・
一作目で一個目の卵を割るところから大ジョッキいっぱいの卵を飲み込むまでワンカットで見せきったあのシーンも、ザ・ファイナルにおいては音楽にのってバツバツはさみが入り飲みきる寸前のところしか見せてくれない。実際また卵たっぷり飲んだのだろうが、そこはテンポ重視なところじゃないだろう。前と全く同じことの反復であったとしても、30年前のシーンを60歳のお前が反復することで熱い感動がが生まれるんだよ。志村けんのスイカ一気食いが全員集合のころより今の方が面白いのと同じだよ(ってあれはほとんど下にこぼしているだけかもしれんけど)
音楽なしで卵一気飲み長回しの後に、あのテーマがかかってトレーニングシーンだったらもっと燃えたのになあ・・・
それはさておき、いよいよロッキーがリングに上がる。レギュラーメンバーのバート・ヤングにトニー・バートンはもちろんのこと、マイク・タイソン(本物)までリングサイドで熱く吠えている。
対戦場所は盟友というか莫逆の友アポロが赤いボクサーに殴り殺された思い出の地ラスヴェガスだが、ジェームズ・ブラウンの♪リヴィンインナメーリカ♪もかからず、モノクロ処理した旧作フィルムのカール・ウェザースのフラッシュバックも一切なしでちと寂しい
試合が始まれば画面隅のレフェリー紹介のキャプションやラウンドや残り時間表示がまるでテレビ中継みたいだ!!!と思わせて楽しいが、ホントにリングに上がっているような臨場感を感じさせる映画的処理ではなく、ホントに中継を見ている気にさせる演出にちょいと疑問も感じるのだが、そんなことがどうでもよく思えるほど、シルヴェスターの戦いぶりが凄まじい。
いかに演技とはいえあの体、あの動き、すげーよシルヴェスター。少なくとも2ラウンド分はばっちり動き、殴り殴られ、走り回り、つい観客と一緒にロッキー!ロッキー!と叫びたくなる。
まだ「ランボー4」全然いける!!と確信!!
その後シリーズお決まりパターンでビル・コンティの音楽にのって最終ラウンドまでダイジェストで突っ走る。モノクロ部分着色とかPVじゃねーんだからさ・・・と、やや激戦ぶりをデジタル処理に頼ってしまったところが少ーし興ざめだが、筋肉と血管びくびく心拍数バクバク感伝わる力任せな演技に圧倒され、「父さんのこともう誰も笑ってないよ」と自画自賛的台詞を子供に喋らせ「もう充分だよ」「いや、まだだ」みたいに最終ラウンドに挑む姿に苦笑しつつものってしまう。
そして第一作を彷彿とさせる判定負け。しかし愛するエイドリアンは今は亡く誰でも知ってる第一作目の最後の絶叫台詞は吐けない。そのため、エピローグが追加されロッキーはエイドリアンの墓を訪れる。
「すべて出し切ったよ」とバート・ヤングに語っておきながら、まだ大観衆の声援に応える余裕のあるシルヴェスターの姿を、矢吹ジョーが見たらどう思うことだろう・・・などと思いもしたが、エピローグでエイドリアンの墓に赤い薔薇(花言葉は愛)をささげ、風景の中に溶ける様にして消えていくロッキーの姿と、葉子に自分のグラブを渡した後真っ白になる矢吹ジョーの姿がよく似ている気がしたのだった。ロッキー死んだのかも・・・と微妙に思わせるところはよい。
などなど、あら探しを楽しみ、筋肉プルプルのマジ演技にわははと笑っておきながら、観賞後についロッキー第一作のサントラをかけながらトレーニングをしてしまう、バカ度も漢(おとこ)度も熱さもMAXなある意味壮絶な傑作ではあった。
さあ次は「ランボー4」だ。頼むぜシルヴェスター。ペンシルバニアの州知事に立候補したりするんじゃないぞ。
****
余談1
ところで、ロッキーの店に入り浸るスパイダーという、かつてのロッキーの対戦相手。どうせならドルフ・ラングレン演じるドラゴにしてほしかった
「あの資本論読みながらただ食いしてるロシア人は何者?」って言われたり、厨房で勝手にボルシチとか作り始めたりしたら大ウケだったのに
*****
余談2
音楽良かった。始まって早々に第一作目のためにシルヴェスターの実弟が作った♪テイキュバッ チュルッチュッチュッー テイキュバッ チュルッチュッチュッー♪がかかったのは笑えた。(第一作のロッキーの家の近くでドラム缶で木切れ燃やして暖まってる街のチンピラどもが歌ってた歌。今にして思えば、街のチンピラ仲間だった女とロッキーとの熟年ロマンスの始まりを想起させるものだったのかも知れない)
後は全編、久々のビル・コンティ節。「アイ・オブ・ザ・タイガー」も使わず、ビル・コンティのスコア中心で突っ走る。エンドクレジットでロッキーテーマから第一作目のエンドクレジット曲(ダイジェストファイト場面の曲[ザ・ファイナルでは未使用だが]の寂しげな弦楽アレンジ)へとリレーするところがまた旧作ファン心をくすぐる。
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理論でも直感でもなくまず筋肉を動かす孤高のクリエイター・シルヴェスターの新作。
小さいながらも自慢のイタリア料理屋で、自分の昔話を客に語って聞かせているだけだった元ボクサーが、あの有名なロッキーのテーマにのってほんの3~4分練習したらもう最強のボクサーとして復活。そんな豪快きわまるスポコン映画であった。トレーニングシーンは、ほんとあの3~4分だけだったな・・・
現役世界チャンピオンに対する作戦はたった一つ「パンチを重くする」
そ・・・そんだけか・・・
それと、どんだけ殴られても前に進み続けること
シリーズ全体に言えることだが、精神論ボクシングを貫き通す当たりが潔い。
テクニックとか作戦とか、そんな難しいことどうだっていいんだよ。最後に立ってりゃいいのさ!!っていうシルヴェスター流ストーリー。
「懐古趣味だろうと客は入る」とか「とんだ茶番です」とかいった感じの自虐的台詞も堂々と使い、「夢を諦めないことの何が悪い!!」とかロッキーの台詞なのか、シルヴェスターの本音なのか判んないところがまた胸を熱くする。
ライセンスの再交付は認めませんというスポーツ委員会みたいなところのお歴々に、俺から何もかもとりあげるな!!と一席ぶつところは、独立宣言起草の地フィラデルフィアを舞台に幸福を追求する権利云々を語って深みを与えようとしたのだろうが、どっちかと言えば、ロッキー第六作目の撮影GOを取り付けるため20世紀FOXとMGMとコロンビアの重役たち相手に唾はきながら熱く大演説しているシルヴェスター・・・って感じの企画会議の情景を勝手に想像し、もっと深みを感じてしまったのだった。
再びリングに上がる老いたロッキー・バルボアの姿と、再びロッキーの看板掲げて監督・脚本・主演で映画界に乗り込むシルヴェスター・スタローンの姿があまりにかぶる。だからこその作品そのもののデキを越えた感動がたしかにある。
ただし、ロッキーのテーマにのったトレーニング・シーンに挿入されるハサミ入りまくりの「肉を叩く」や「卵一気飲み」はファン心理を判っていない様に思える。特に卵は・・・
一作目で一個目の卵を割るところから大ジョッキいっぱいの卵を飲み込むまでワンカットで見せきったあのシーンも、ザ・ファイナルにおいては音楽にのってバツバツはさみが入り飲みきる寸前のところしか見せてくれない。実際また卵たっぷり飲んだのだろうが、そこはテンポ重視なところじゃないだろう。前と全く同じことの反復であったとしても、30年前のシーンを60歳のお前が反復することで熱い感動がが生まれるんだよ。志村けんのスイカ一気食いが全員集合のころより今の方が面白いのと同じだよ(ってあれはほとんど下にこぼしているだけかもしれんけど)
音楽なしで卵一気飲み長回しの後に、あのテーマがかかってトレーニングシーンだったらもっと燃えたのになあ・・・
それはさておき、いよいよロッキーがリングに上がる。レギュラーメンバーのバート・ヤングにトニー・バートンはもちろんのこと、マイク・タイソン(本物)までリングサイドで熱く吠えている。
対戦場所は盟友というか莫逆の友アポロが赤いボクサーに殴り殺された思い出の地ラスヴェガスだが、ジェームズ・ブラウンの♪リヴィンインナメーリカ♪もかからず、モノクロ処理した旧作フィルムのカール・ウェザースのフラッシュバックも一切なしでちと寂しい
試合が始まれば画面隅のレフェリー紹介のキャプションやラウンドや残り時間表示がまるでテレビ中継みたいだ!!!と思わせて楽しいが、ホントにリングに上がっているような臨場感を感じさせる映画的処理ではなく、ホントに中継を見ている気にさせる演出にちょいと疑問も感じるのだが、そんなことがどうでもよく思えるほど、シルヴェスターの戦いぶりが凄まじい。
いかに演技とはいえあの体、あの動き、すげーよシルヴェスター。少なくとも2ラウンド分はばっちり動き、殴り殴られ、走り回り、つい観客と一緒にロッキー!ロッキー!と叫びたくなる。
まだ「ランボー4」全然いける!!と確信!!
その後シリーズお決まりパターンでビル・コンティの音楽にのって最終ラウンドまでダイジェストで突っ走る。モノクロ部分着色とかPVじゃねーんだからさ・・・と、やや激戦ぶりをデジタル処理に頼ってしまったところが少ーし興ざめだが、筋肉と血管びくびく心拍数バクバク感伝わる力任せな演技に圧倒され、「父さんのこともう誰も笑ってないよ」と自画自賛的台詞を子供に喋らせ「もう充分だよ」「いや、まだだ」みたいに最終ラウンドに挑む姿に苦笑しつつものってしまう。
そして第一作を彷彿とさせる判定負け。しかし愛するエイドリアンは今は亡く誰でも知ってる第一作目の最後の絶叫台詞は吐けない。そのため、エピローグが追加されロッキーはエイドリアンの墓を訪れる。
「すべて出し切ったよ」とバート・ヤングに語っておきながら、まだ大観衆の声援に応える余裕のあるシルヴェスターの姿を、矢吹ジョーが見たらどう思うことだろう・・・などと思いもしたが、エピローグでエイドリアンの墓に赤い薔薇(花言葉は愛)をささげ、風景の中に溶ける様にして消えていくロッキーの姿と、葉子に自分のグラブを渡した後真っ白になる矢吹ジョーの姿がよく似ている気がしたのだった。ロッキー死んだのかも・・・と微妙に思わせるところはよい。
などなど、あら探しを楽しみ、筋肉プルプルのマジ演技にわははと笑っておきながら、観賞後についロッキー第一作のサントラをかけながらトレーニングをしてしまう、バカ度も漢(おとこ)度も熱さもMAXなある意味壮絶な傑作ではあった。
さあ次は「ランボー4」だ。頼むぜシルヴェスター。ペンシルバニアの州知事に立候補したりするんじゃないぞ。
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余談1
ところで、ロッキーの店に入り浸るスパイダーという、かつてのロッキーの対戦相手。どうせならドルフ・ラングレン演じるドラゴにしてほしかった
「あの資本論読みながらただ食いしてるロシア人は何者?」って言われたり、厨房で勝手にボルシチとか作り始めたりしたら大ウケだったのに
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余談2
音楽良かった。始まって早々に第一作目のためにシルヴェスターの実弟が作った♪テイキュバッ チュルッチュッチュッー テイキュバッ チュルッチュッチュッー♪がかかったのは笑えた。(第一作のロッキーの家の近くでドラム缶で木切れ燃やして暖まってる街のチンピラどもが歌ってた歌。今にして思えば、街のチンピラ仲間だった女とロッキーとの熟年ロマンスの始まりを想起させるものだったのかも知れない)
後は全編、久々のビル・コンティ節。「アイ・オブ・ザ・タイガー」も使わず、ビル・コンティのスコア中心で突っ走る。エンドクレジットでロッキーテーマから第一作目のエンドクレジット曲(ダイジェストファイト場面の曲[ザ・ファイナルでは未使用だが]の寂しげな弦楽アレンジ)へとリレーするところがまた旧作ファン心をくすぐる。
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
こんな詳細なレビューは初めて。
これは『ロッキー』への深い思い入れがないと
書けないですね。
感服しました。
ちなみに一番深い思い入れがあるのは「4」です
1で泣いて、2でふーん、3でちょっと飽きてきて、4で大爆笑、5は普通につまんない、6はもう好きにやっちゃいなよ
てところでコメントありがとうございました
ドルフ・ラングレン・・・秀逸でしたね。
前半のロッキーの説教は最高に眠かったです・・。
悪名高き「4」ですが、あれが好きな人に出会うと、同志って気がします
「6」にもドルフとかゴルバチョフのそっくりさんとか出てきてほしかったですね。
「4」でソ連のトレーナーを演じていた人が「6」ではスタントコーディネーターだかボクシングのコーチだかなんかで、スタッフとして参加していました。