【個人的評価 ■■■■■□】(■□□□□□:最悪、■■■■■■:最高)
心湧き立つこれぞ冒険活劇。見事な人物造形と明快なストーリーラインと要所要所に見せ場を配したテンポのいい脚本。
なにか問題があるとすれば、背景となる社会問題の重さの割に話が面白すぎることかもしれない。社会批判も社会正義もあまりに見事にまとまりすぎた脚本の中にぴったり収まり、物語を構成するパーツでしかない。
というより、はじめから冒険劇を作りたかっただけなのかもしれない。
インディ・ジョーンズではホロコーストを持ち出さないスピルバーグのバランス感覚をどう見るか。
まあ、私にはどっちにせよ関係ないことなので、映画のおもしろさだけで評価してあげようと思う。
劇中登場する、教師とデカプリとの会話が印象的であった。
人間は性善、性悪どちらかとの問答において、教師は「人間は本来真っ白で、善悪は行動によって決まるにすぎない」という趣旨のことを言う。
主人公三人は結果的にアフリカの小国にはびこる悪を追い詰めていくのだが、それは結果にすぎず、目的ではなかった。
ジャイモン・ハンスウ演じるアフリカ人の男は、ただ家族を救うことが目的で、中盤以降は長男坊を救い出すこと(さらに言えば長男を立派に育て医者にすること)が目的であり、極端に言えば故国がどうなろうと、欧米日がアフリカを食い物にしようとどうだっていい。ラストで大金をチラつかせる悪党に、「ダイヤは家族と引き換えだ」と言うところはかっこいいが、続けて言う一言はもっと好きだ。「もちろん金ももらう」同胞の血で作られた金だが、金自体に罪はない。もらえるものはもらっておく・・・そんなクールさがかっこよく、型通りの善人ではない、とても人間臭いキャラで面白い。
我らがスターのデカプリ様は巨悪の手先で、あからさまに金目当て。アクセサリーを身につけ着飾りながら正義を云々する文明国の人々を偽善とののしるが、それは悪事を働く者の屁理屈である。
特ダネ目当ての美人記者ジェニファー・コネリーが唯一正義の心を持った良心的なジャーナリストに見えるが・・・彼女にしてもその表向きの信念とは別の趣味嗜好による行動が見え隠れする。実のところは危険を潜り抜けるのが大好きな冒険者がその正体なのではないかと思う。危険を楽しむ大義名分としてジャーナリズムとか社会正義を掲げている。だからこそ危険な臭いの漂う小悪党デカプリに恋にも似た感情を抱いたのだ。そんなジェニファーが本作のキャラで最もよく作り込まれているようで大好きだ。
家族・ダイヤ(・・・を手に入れアフリカ脱出)・特ダネ(・・・をゲットする過程の危険体験)
目的のそれぞれ異なる3人が、お互いを利用しあい、手持ちのカードを少しずつ見せていきながら、危機また危機を乗り越えて、ピンクダイヤモンドへと近づいていく。その過程で結果論ではあるが、彼らはアフリカの小国が抱える問題を目の当たりにし、黒幕である文明社会のエゴを見て、悪人どもの征伐というささやかながらも歴史的な役割を果たす。
彼らはヒーローであり、その勇気と正義の心は多くの人たちの心を動かし世界を変えていくかもしれない。だがそれは決して彼らが望んだことではない。善悪は行動によって決まるだけなのだ。
デカプリはこの映画でアカデミー候補になったけど、確かにディパーテッドの彼なんかよりはるかに魅力的。演技が上手いとかでなく、シナリオと演出の上手さに尽きるとは思うのだけど。
ひたすら金・金・金だった男がダイヤ探しの旅でガラにもなく義侠心に走ってしまい、大けがを負う。バカだな俺・・・と思う反面、それでも満足している彼。嫌いでたまらなかったアフリカで死ぬことになるのだが、見渡せば美しいアフリカの大地と足下には多くの血を吸ってきたような赤い砂。かつて父親の血も吸った砂。その砂に自らの血も吸わせながら、アフリカの砂と化していく自分。そうか、やっぱり母なる故郷を愛していたんだな、俺・・・と思いつつ恋心に似た気持ちも抱く女に衛星電話で美しい風景を実況中継。そんなデカプリ絶命シーンは、生死・故郷・侵略の歴史・南北格差・内戦・男女の愛・親子の愛・雄大なアフリカの風景・・・とあまりに多くのものが見事に溶け合い、あまりに美しく、深く、熱く・・・感動を禁じ得ないのだった。
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
心湧き立つこれぞ冒険活劇。見事な人物造形と明快なストーリーラインと要所要所に見せ場を配したテンポのいい脚本。
なにか問題があるとすれば、背景となる社会問題の重さの割に話が面白すぎることかもしれない。社会批判も社会正義もあまりに見事にまとまりすぎた脚本の中にぴったり収まり、物語を構成するパーツでしかない。
というより、はじめから冒険劇を作りたかっただけなのかもしれない。
インディ・ジョーンズではホロコーストを持ち出さないスピルバーグのバランス感覚をどう見るか。
まあ、私にはどっちにせよ関係ないことなので、映画のおもしろさだけで評価してあげようと思う。
劇中登場する、教師とデカプリとの会話が印象的であった。
人間は性善、性悪どちらかとの問答において、教師は「人間は本来真っ白で、善悪は行動によって決まるにすぎない」という趣旨のことを言う。
主人公三人は結果的にアフリカの小国にはびこる悪を追い詰めていくのだが、それは結果にすぎず、目的ではなかった。
ジャイモン・ハンスウ演じるアフリカ人の男は、ただ家族を救うことが目的で、中盤以降は長男坊を救い出すこと(さらに言えば長男を立派に育て医者にすること)が目的であり、極端に言えば故国がどうなろうと、欧米日がアフリカを食い物にしようとどうだっていい。ラストで大金をチラつかせる悪党に、「ダイヤは家族と引き換えだ」と言うところはかっこいいが、続けて言う一言はもっと好きだ。「もちろん金ももらう」同胞の血で作られた金だが、金自体に罪はない。もらえるものはもらっておく・・・そんなクールさがかっこよく、型通りの善人ではない、とても人間臭いキャラで面白い。
我らがスターのデカプリ様は巨悪の手先で、あからさまに金目当て。アクセサリーを身につけ着飾りながら正義を云々する文明国の人々を偽善とののしるが、それは悪事を働く者の屁理屈である。
特ダネ目当ての美人記者ジェニファー・コネリーが唯一正義の心を持った良心的なジャーナリストに見えるが・・・彼女にしてもその表向きの信念とは別の趣味嗜好による行動が見え隠れする。実のところは危険を潜り抜けるのが大好きな冒険者がその正体なのではないかと思う。危険を楽しむ大義名分としてジャーナリズムとか社会正義を掲げている。だからこそ危険な臭いの漂う小悪党デカプリに恋にも似た感情を抱いたのだ。そんなジェニファーが本作のキャラで最もよく作り込まれているようで大好きだ。
家族・ダイヤ(・・・を手に入れアフリカ脱出)・特ダネ(・・・をゲットする過程の危険体験)
目的のそれぞれ異なる3人が、お互いを利用しあい、手持ちのカードを少しずつ見せていきながら、危機また危機を乗り越えて、ピンクダイヤモンドへと近づいていく。その過程で結果論ではあるが、彼らはアフリカの小国が抱える問題を目の当たりにし、黒幕である文明社会のエゴを見て、悪人どもの征伐というささやかながらも歴史的な役割を果たす。
彼らはヒーローであり、その勇気と正義の心は多くの人たちの心を動かし世界を変えていくかもしれない。だがそれは決して彼らが望んだことではない。善悪は行動によって決まるだけなのだ。
デカプリはこの映画でアカデミー候補になったけど、確かにディパーテッドの彼なんかよりはるかに魅力的。演技が上手いとかでなく、シナリオと演出の上手さに尽きるとは思うのだけど。
ひたすら金・金・金だった男がダイヤ探しの旅でガラにもなく義侠心に走ってしまい、大けがを負う。バカだな俺・・・と思う反面、それでも満足している彼。嫌いでたまらなかったアフリカで死ぬことになるのだが、見渡せば美しいアフリカの大地と足下には多くの血を吸ってきたような赤い砂。かつて父親の血も吸った砂。その砂に自らの血も吸わせながら、アフリカの砂と化していく自分。そうか、やっぱり母なる故郷を愛していたんだな、俺・・・と思いつつ恋心に似た気持ちも抱く女に衛星電話で美しい風景を実況中継。そんなデカプリ絶命シーンは、生死・故郷・侵略の歴史・南北格差・内戦・男女の愛・親子の愛・雄大なアフリカの風景・・・とあまりに多くのものが見事に溶け合い、あまりに美しく、深く、熱く・・・感動を禁じ得ないのだった。
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見応えのある映画でした!
盛り上げてやるぜぇぇぇ!!的、開き直った見応えっぷりが最高でしたね