ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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年賀はがきに潜むノルマ地獄、自腹で数千枚の実態

2013年12月05日 | Weblog

 平成二十五年十一月十八日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「年賀はがきに潜むノルマ地獄、自腹で数千枚の実態」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 来年の干支は馬である。そ干支にちなんで年賀状をどう書こうかそろそろ考え始めている人もいるはずである。そんな中、17日付の朝日新聞朝刊一面に「年賀はがき『自爆営業』」という記事がある。それによれば日本郵便では、正社員、非正規社員ともに年賀はがきに1人数千枚単位の販売ノルマを課しているという。

 例えば、中部地方に住む日本郵便の非正規社員の男性は、三千枚以上のノルマをつきつけられ、自腹を切って買い取り、金券ショップに転売しているという。

 日本郵便では、販売ノルマを達成できず、自費で買い取る行為は「自爆営業」と呼ばれる。ノルマは年賀はがきを筆頭に、暑中見舞いはがき(かもめーる)や、母の日や父の日といったイベントの贈り物や、季節ごとの各地の名産といったギフト商品にもノルマが設定されている。

 上司から「実績の低い者は給料泥棒だ」「営業やらんかったら、辞めてくれて構わない」と言われたり、半年ごとに更新している有期契約社員には、「売らなければクビ」と脅され、「なんとしても売ります」と誓約書をかかされた人もいるという。

 福岡県では、正社員の男性(52)が1万枚のノルマに対し、自力で売れるのは4千枚という状況で「心も体もぼろぼろ」になり、うつ病で昨春、約30年勤めた郵便局を辞職。非正規社員の男性(50代)が「ノルマを達成しないと査定に影響する」と恫喝されたり、非正規の女性(39)が、かもめーるの目標未達成を理由に時給を下げると言われ、退職する、といったケースが相次いでいるという。

 日本郵便の親会社、日本郵政は2015年の株式上場に向け、コンプライアンス(法令順守)を強化しており、「自爆営業」については今年度から、防止策をとりいれたという。しかし、その中身は、「不適正営業の撲滅」などと称して、金券ショップの定期的な見回りを実施し、転売されたはがきのくじ番号を調べ、転売職員を特定したり、厳しいノルマがあった場合の「内部通報窓口」を設置させるというもの。だが、冒頭のように、今年の年賀状でも1人当たり数千枚のノルマがあり、相変わらず金券ショップに持ち込まれているのが実情というわけ。

 ちなみに、日本郵便では、パワハラが蔓延している、という告発もある。今年8月11日に開催したブラック企業大賞授賞式で、日本郵政グループ職員の労組「郵政産業労働者ユニオン」の丹羽良子氏が述べていた話によると、社員の間で、さいたま新都心局はトヨタ方式を適用しており、労務管理が非常に厳しいことで知られていた。そのさいたま新都心局に、岩槻局の正社員A氏が転勤を命じられた。A氏は「行きたくない」と思い悩んでいたが、転勤後は、トヨタ方式に耐え切れず、うつ病を発症し、休職、復職を3回繰り返し、その間も「他の局へ行きたい」と希望を述べていたが叶わず、3回目の復職時に、午前8時過ぎに出社して、すぐに局の4階から飛び降りて亡くなったという。A氏にはまだ幼い子どもが3人いた。「こういう過労自死、過労死が、郵政にはたくさんあります」と同氏は語っていた。

 年賀状や窓口の社員たちを見るたび、そのことに思いをはせる必要があるのではないか。(佐々木奎一)


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