ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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原発事故にみる「日本人の思考様式」の特徴

2013年04月01日 | Weblog

2013年3月11日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「原発事故にみる「日本人の思考様式」の特徴」
 
を企画、取材、執筆しました。
 


 けさの各紙は、ちょうど2年前の今日が東日本大震災だったため、東北被災地や福島第一原発の特集記事を載せている。

 その一環で日本経済新聞に「日本人の思考様式に問題」という小見出しの記事がある。これは黒川清・元国会事故調査委員長へのインタビューをまとめたもの(全文は同紙電子版に掲載)。

 記事によると黒川氏は、昨年7月に提出した国会事故調査委員会(以下、国会事故調)の報告書に盛り込んだ7つの提言のうち、実現したのは一つしかないことに触れ、「日本人のマインドセット(思考様式)に大きな問題がある」と指摘し、「福島第1原発の事故は、日本の役所や大企業のガバナンス(統治)が不適切であることを明かにした。責任ある立場の人が、するべき決断をしない。責任もとらない。こんな年功序列の硬直的なタテ組織は世界でもまれだ」と批判している。

 ちなみに、7つの提言とは、「規制当局を監視するための国会の常設委員会の設置」「政府の危機管理体制の見直し」「被災地住民に対する政府の対応」「電気事業者の監視」「新しい規制組織の要件」「原子力法規制の見直し」「独立調査委員会の活用」の七つ。そのうち、一番目の「常設委員会の設置」しか今のところ実現していない。

 例えば、提言の七番目では、「未解明部分の事故原因の究明」が目的の一つに掲げられているが、これについて政府のやる気のなさを表す出来事がつい先月も発覚している。それは東電が国会事故調に対し、虚偽説明をしていた事件だ。

 もともと国会事故調は、福島第一原発の冷却装置「非常用復水器(IC)」は津波でなく、地震によって壊れた可能性を指摘している。それをたしかめるため、国会事故調の委員が昨年2月、ICのある原子炉建屋4階の現地調査を決行しようとした。すると東電の企画部部長が、「建屋内部は、カバーが設置されており、真っ暗」と説明し、内部調査を断念させていたのである。しかし、実際には照明が設置されていて全然暗くなかった。それはなぜか。

 そもそも東電や政府は、福島第一原発事故の直接原因は「津波」と結論付けている。それが国会事故調のいうように、地震が損傷の原因となると、全原発の耐震基準を見直さなければならない。そうなると、地震大国日本で原発を設置して安全なのか、という根本的問題にも直面する。原発再稼働の見通しもたたなくなるかもしれない。だから東電は「真っ暗」とウソをついた、と見る識者は多い。

 こういう状況にもかかわらず、自公党政権は、原発再稼働について、「原子力規制委員会で安全だと評価されたものは再稼働を進めていきたい」と言うのみで、東電のウソはなかったかのように振舞っている。

 歴史を振り返ると、戦時の日本は、真珠湾攻撃以降、連戦連勝だったが、ミッドウェー海戦を皮切りに、連戦連敗して、しまいには国土が焼け野原になってしまった。

 戦後は、高度経済成長で経済大国になったがバブルがはじけてからも、国債により痛みを先送りし続けた結果、国債残高は約1,000兆円まで膨れ上がってしまった。

 原発事故についても、事故原因という現実を直視せず、電気料金が上がる、という目先の痛みを避けることだけを優先してなし崩しに再稼働していくと、振り返れば福島第一事故はミッドウェー海戦のように原発事故の序盤でしかなかった、ということになりかねないのではないか?

 ではどうすればよいか。冒頭のインタビューで黒川氏は、7つの提言のうち、一つしか実現できていないことについて、「国民がそれぞれの選挙区で『なぜ実現しないのか』と議員に質問するしかない。(略)民主主義は与えられるものではない。自分たちで築き上げていくものだ」と述べている。

 迂遠なようだが、黒川氏のいうように、私たち一人一人の意識が変わらない限り、日本の政治の思考様式は変わらないのではないか。(佐々木奎一)


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1 コメント

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はじめまして、初コメントです! (めぐみ)
2013-04-01 15:16:19
はじめまして!めぐみっていいます、他人のブログにいきなりコメントするの始めてで緊張していまっすヾ(@~▽~@)ノ。ちょくちょく見にきてるのでまたコメントしにきますね(。-_-。)ポッ
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