ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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参院選自民圧勝で問われる「良識の府」のかたち

2013年08月06日 | Weblog

 2013年7月22日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「参院選自民圧勝で問われる「良識の府」のかたち」
 
を企画、取材、執筆しました。
 

 

  けさの朝刊は全紙一面ぶち抜きで、「自公圧勝、衆参過半数」(朝日新聞)、「自公70超『ねじれ』解消」(産経新聞)といった見出しに、安倍晋三首相の笑顔の写真付きで、昨日の参院選の結果を報じている。

 今回の与党の大勝により、07年の第一次安倍政権の参院選大敗から、民主党政権の一時期を除き6年間続いた「ねじれ国会」(参院で与党が少数の状態)が解消されることになる。

 各紙は、ねじれ解消により、安定した国会運営ができる、とメリットを述べるが、その一方で、「ねじれ解消で安倍政権を縛る大きなブレーキはなくなった。今の自民党には『党内野党』も不在で、暴走した際の歯止めが利かない懸念がある」(日本経済新聞)、「衆参の『ねじれ』が消え、ブレーキなしも心配される」(朝日新聞)といった懸念の声や「参院選については、『良識の府』『理性の府』という理想像がある。衆院の議決を適度にチェックすることが期待された。ねじれ国会こそ、その役割がより発揮できるはずだった」(毎日新聞)、「参院のあり方など統治機構の将来像を優先して議論することを改めて求めたい」(同)といった、「参議院のあり方」を問う論調もあった。

 ちなみに、かつて参院は、良識の府を志向していた時期もあった。「緑風会18年史」(著: 野島貞一郎/緑風会史編纂委員会刊)よると、そもそも参院は、多数党が暴走した時に冷静にチェックするためにつくられている。そのため、参院には、衆院のような解散はなく、3年ごとに半数改選で、任期は6年と長い。被選挙権も参院は30歳で衆院より5歳高い。選挙区も、地方区とともに全国を一選挙区とする区を設けることで、衆院とは性質の違う議員を出すことを意図している。

 こうして1947年、第一回の参院選挙が行われ、250議席のうち、無所属が108人で多数を占めた。この無所属議員のうち74人が集まり、緑風会が結成された。名前の由来は、緑は七色の中央で、右にも左にも偏っていない。緑は清新、静寂、平安、沈思を思い起こさせ、参院の性格と似通う。風とは、国会に新鮮な風を送りたい、という意味だ。

 また、緑風会は、衆院に議席を持たない、という掟だった。理由は、衆院に加わると、政権争奪のうずに巻き込まれて、参院としての使命を果たせなくなるためだ。参院は、野次や闘争の場所であってはならない。いつでも、冷静な判断と公明な批判の場所でなければならない。そのためには普通の政党のようなことはしない、という方針だった。

 緑風会は、1954年には、大臣、政務次官も出さないと決めた。理由は、参院は、不偏不党、是々非々の立場で、政争に介入すべきではない、立法に専念すべきで行政にタッチすべきではない、という考え方からだった。

 こうして活動を続けたが、二回目の参院選以降、徐々に政党化の波にさらされ、結成から18年後に緑風会は解散した。

 参院のあり方が問わている今、良識の府を志した緑風会の時代に立ち戻って考える必要があるではないか。(佐々木奎一)


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