ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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生活保護受給者を“たらい回し”で儲ける病院

2014年04月03日 | Weblog

 平成二十六年三月二十一日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「生活保護受給者を“たらい回し”で儲ける病院」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 厚労省の最新の統計によると、全国で生活保護を受けている人は216万7220人(昨年12月時点)と過去最高を更新している。そんな中、けさの毎日新聞に「生活保護受給者 医療費過大支払い横行 転院繰り返し 検査院調査」という記事が載っている。記事によれば、生活保護受給者が病院間で不自然な転院を繰り返し、公費から初診料などが過大に支払われる事態が横行していることが、会計検査院の調査で判明したという。

 この調査は会計検査院が24都道府県210事業主体の11年度の生活保護を対象に調査したもの。それによると「3か所以上の病院や診療所に入院した生活保護受給者1373人を抽出して調べたところ、約1割の132人が10回以上転院していた」という。

 「1年間に18回入退院した受給者のケースでは、1回の入院期間は5~49日で、計7カ所の医療機関を行き来していた。同一の医療機関に入院した場合に比べ、初診料など計約136万円が過大に支払われていた。また、生活保護受給者を100人以上受け入れていた医療機関が8カ所あり、特定の医療機関の間で転院を繰り返す受給者が多かった」という。

 この調査結果について、生活保護制度に詳しい道中隆・関西国際大教授(社会福祉学)は「生活保護受給者に精神障害などがある場合、一般病院ではなかなか入院を引き受けてもらえず、特定の病院グループ内で転院を繰り返すことが多い。転院すれば初診料などが得られるため、病院側にもメリットがある」とコメントしている。

 要するに、生活保護受給者をたらい回しにして儲けている病院があるというわけ。

 なぜこんなことが起こるのかといえば、生活保護の医療費は全額公費からねん出されるので、受給者にとってはいくら入院しても懐は一向に痛まず、一人暮らしより居心地も悪くなく、病院の側にとっても、受給者は金払いの良いお客様で、互いにウィンウィンという構図がある。その裏では税金を払っている国民は損をしているわけだが。

 もちろん、転院を繰り返すのはごく一部の悪質な病院だけとしても、受給者のなかにはタダだから通院するというケースが多々あるはずである。例えば、年金受給者のなかには、医者にかかり初診料や受診料、薬代を負担した場合と、もう1日様子を見て治った場合や、今日病院に行かないことで悪化するリスクなどを考慮し、トータルで病院に行くかどうか判断する人も多いはず。そういう場合も医療費がタダなら迷いなく病院に行ける。つまり、タダだと経済原理が働かなくなるので、冒頭の入院を10回以上も繰り返すといった異様事態すら生じてまう。

 だからといって、生活保護受給者が、医療費をしっかり負担するのは重過ぎるも事実。ではどうすればよいか。例えば、上限750円や500円などと定めて、少しでも医療費を負担する仕組みにする必要があるのではないか。昔から、タダほど高いものはない、という言葉があるが、今の生活保護のシステムにもその言葉は当てはまるといえないだろうか?(佐々木奎一)


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