ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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遅刻したら解雇…超法規の特区が全国でまかり通る!?

2013年10月22日 | Weblog

 平成二十五年九月三十日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「遅刻したら解雇…超法規の特区が全国でまかり通る!?」
 
を企画、取材、執筆しました。

 


 パワハラ、セクハラ、マタハラ、残業代ゼロ、退職強要、追い出し部屋といった労働法を守らないブラック企業が横行している昨今だが、これに関連して、けさの朝日新聞にこんな記事があった。それは「解雇特区、企業を優先 ベンチャー・外資進出促す 無理な働き方増える懸念」という記事。

 これによると、安倍政権が構想する「国家戦略特区」で、従業員を解雇しやすくしたり、労働時間の規制をなくしたりする特区の導入が検討されており、政府は今秋の臨時国会に関連法案を出す計画という。

 特区は安倍政権が掲げる成長戦略の柱の一つで、目的はベンチャーの起業や、海外企業の進出を促すためという。政府は5月、国家戦略特区ワーキンググループをつくり、自治体や企業にも提案を募って、雇用や医療、農業、教育などの特区を検討してきた。

 うち雇用では、①入社時に結んだ条件に沿えば解雇できる、②一定の年収があれば労働時間を規制しない、③有期契約で5年超働いても、無期契約になれるルールを適用しなくていい――の3点。

 例えば、「『遅刻をすれば解雇』と約束し、実際に遅刻したら解雇できる」という違法解雇もまかり通るという。

 ①と②の特例は、特区内(東京、大阪、愛知の三大都市圏の見込み)で開業後5年以内の企業の事業所に適用。③は外国人労働者の比率が3割以上の事業所に適用される。

 ちなみに、ジャーナリストの堤未果氏は、9月25日付のJ-WAVEの番組「JAM THE WORLD」で、この特区についての問題点が三点ある、と指摘し、こう述べている。

 「一つは、『この3都市でまず実験してみて、混乱が生じたらそこで止めればいいじゃないか』という、混乱がその都市の中だけでとどまるという楽観論があります。でも、実はこの三都市に本社があれば、他の支社でも同じようなことができます」

 「二つ目は、『効果がなければこれは見直します。これは実験です』と言われているんですが、実は、その効果は何で判断するかというと、これは企業収益。企業にとって収益が上がったか、企業をたくさん外から誘致するという目的が達せられたか。これは数字でみられますが、これは必ず企業の収益というのは上がりますので、見直される可能性は非常に低い」

 「三つ目は、これを整備して企業がビジネスをしやすい環境を三大都市で始めた場合、このあとに、例えば、TPPに加盟したらどうなるか。TPPには、ラケット条項が入っていますから、一度緩めた規制はもとに戻すということはできないんですね。つまり、TPPの前にこれを整備してしまうと、そのあとTPPに入った場合に、これは元には戻らない」

 要するに、特区は特区にとどまらず、超法規が全国でまかり通るというわけ。

 なお、この特区について、厚生労働大臣の田村憲久氏は、「労働者を保護する法令は、憲法上の基本的人権の一つと認識している。特区の内と外で違うということが、果たしてできるのか」と述べ、9月27日の非公開の政府の会議(産業競争力会議の分科会。甘利明・経済再生相、民間議員の竹中平蔵・慶大教授らが出席)の場でも、田村厚労相は、「特区導入は難しい」と回答し、特区導入の結論は持ち越されているという。(朝日新聞より)

 多くの労働者にとって他人事ではないこの特区政策。ここで田村厚労相が見識を曲げずに労働者の権利を守ることができれば、“ポスト安倍”の第一人者として多くの国民に認知されるかもしれない。今後の動向に注目したい。(佐々木奎一)


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