ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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死別悲しみ2週間で「うつ」米国精神学会が新基準

2013年05月27日 | Weblog

2013年5月13日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「死別悲しみ2週間で「うつ」米国精神学会が新基準」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 11日付の読売新聞朝刊に「死別悲しみ 2週間で『うつ』 診断基準 米学会が改定」という記事がある。これによると、米国精神医学会が近く公表する新たな診断基準「DSM-5」で、子どもや配偶者などを亡くした後の気分の落ち込みを、安易にうつ病と診断する恐れの高い改定をしていることが判明したという。

 これまでの診断基準では、「抑うつ気分」「興味または喜びの喪失」「不眠や睡眠過多」などの症状が2週間続き、生活に支障がある場合にうつ病と診断されていた。ただし、「死別の場合は、症状が2か月以上続く場合に診断できる」と規定されていた。新基準では、この死別の規定が削除されるという。

 米国精神医学会の基準は、世界各国で用いられている。つまり、日本の医療現場でもこの基準が適用されることになる。この事態に日本の精神科医もさすがに疑問の声を上げている。例えば、日本うつ病学会の神庭重信理事長(九州大教授)は「死別を経験すると、病気でなくても、うつ病と同じ症状が2週間以上続くことは珍しくない」と反論しているという。

 ちなみに、米国精神医学会はこれまでも、新しい診断基準を設けて、新しい精神病をつくってきた歴史がある。例えば、診断基準「DSM-IV」では、注意欠陥/多動性障害について「学業、仕事、またはその他の活動において、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な過ちをおかす」「課題または遊びの活動で注意を持続することがしばしば困難である」「直接話しかけられたときにしばしば聞いていないように見える」「(学業や宿題のような)精神的努力の持続を要する課題に従事する事をしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う」「 (例えばおもちゃ、学校の宿題、鉛筆、本、道具など) 課題や活動に必要なものをしばしばなくす」「しばしば外からの刺激によって容易に注意をそらされる」といった症状が6か月以上続いたもの。

 もしくは「しばしば手足をそわそわと動かし、またはいすの上でもじもじする」「しばしばしゃべりすぎる」「しばしば静かに遊んだり余暇活動につくことができない」「しばしば順番を待つことが困難である」といった症状が6か月以上続いたものとされている。

 だが、これらの症状は人類史上に残る天才たちに当てはまるケースも多い。例えば、「種の起源」を遺したダーウィンは、幼少時代は周りから「妹よりも物覚えが悪い」と言われ、小学校のときには校長から「のらくら」といわれるほどの落ちこぼれだった。

 万有引力の法則を発見したニュートンは、ぼんやりした性格で、卵と間違えて時計をゆでたり、ズボンをはくのを忘れて役所に行ったり、手綱の先に馬がいないことに気づかず丘に登ったといった小話が伝えられている。

 アインシュタインは子どもの頃は劣等生で、一語話しては口ごもるというぎこちなさで、物理と数学以外はほとんど興味を示さず、計算ミスも多かったという。(「トンデモ偉人伝―天才編」(著: /彩図社刊)より)。

 米国精神学会の基準では、こうした天才たちでさえ精神障害で片付けられてしまう。死別2週間でうつ、という基準に日本の医師は反対しているが、反論する必要性はもっとたくさんあるのではないか。(佐々木奎一)

 


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