ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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生活保護受給者の7割「冠婚葬祭に出ず」の必然性

2013年05月31日 | Weblog

2013年5月10日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「生活保護受給者の7割「冠婚葬祭に出ず」の必然性」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 けさの毎日新聞に「『冠婚葬祭に出ず』7割 生活保護受給者が回答」という記事がある。それによると、生活保護受給者の大半が地域の行事や冠婚葬祭に参加していないことが、全日本民主医療機関連合会(民医連)の調査で判明したという。背景には、交際費を捻出する余裕がないことや生活保護に対する後ろめたさが背景にあるという。

 調査は2~3月、44都道府県の医療・介護施設利用者で生活保護を受ける1482人が対象。回答者の7割超は60歳以上。調査結果は、冠婚葬祭に「全く参加しない」「あまり参加しない」の合計は69.5%。町会費を含めた交際費については「なし」と「月額1000円以下」は50.4%だった。

 自由記載欄では「近所の人に肩身が狭い」「金銭的なことからつき合いは全て断っている」などとつづられている。

 なお、同記事は、調査担当者の「健康で文化的な最低限度の生活ができているとは言い難い。経済的困窮が人的交流の貧しさにつながっている」という言葉で締めくくっている。しかし、厚労省の直近の速報値によれば、今年1月時点の生活保護受給者は、215万3642人(前月比+2477人)で過去最高を更新。このような情勢下では、生活保護費の増額は難しいのではないか。

 また、「冠婚葬祭に7割が出ない」というが、祝儀や香典には数万円かかるケースが多い。普通に働いている人でも、そうした出費をする余裕のない人もいる。そうした中で、生活保護受給者が、冠婚葬祭費をなかなか捻出できないのは、仕方がないのではないか。むしろ、生活保護費で冠婚葬祭や交際費に多くを割いている方が、不自然といえよう。

 また、記事では「生活保護に対する後ろめたさ」という表現を使っているが、そうした感情はむしろ自然なのかもしれない。つまり、「生活保護をもらっている状態から早く抜け出したい」「できれば生活保護を受けないで生活したい」という気持ちで生活保護を受給していれば、一種のうしろめたい感情を持つのは自然といえよう。

 このニュースは、生活保護とは無縁と思っている働き盛りの人々にとっても他人事ではない。例えば、現在、生活保護受給者の4割は高齢者世帯が占めている。そのなかには公的年金を払ってこなかったツケで老後に収入が途絶えているケースも多い。つまり、年金をコツコツ積み立てていない人は、生活保護予備軍に位置しているといえよう。だからこそ、公的年金は払っていく必要がある。

 また、生活保護受給者のなかには、ある日突然、事故や病気で働けなくなり、やむを得ず受給している人も多い。そうした事態に備えるため、万が一のための生命保険などに入っておければ、生活保護を受けなくても済む確率が高い。

 今求められているのは、なるべく生活保護の世話にはなりたくない、という矜持ではないだろうか。(佐々木奎一)


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