読書の記録

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アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

2020年02月09日 | テクノロジー

アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る

藤井保文 小原和啓
日経BP社


 読まなきゃ読まなきゃと思っていてずるずるしていて、一周おくれた感じでようやく読んだ。すでに10刷目になっていた。
 CXだDXだEXだといろいろ喧しく、MaaSだSaaSだXaaSだと言われているのである。今年は5Gがキーワードにもなりそうだ。

 会社の若い社員を観ていると、あるいはサービス享受者としてのうちの子どもとかその友達とか見ていると、彼らはかなりの自然な感覚でこういう気分にあるし、こういう前提で物事を考えるし、企画アイデアも出す。アフターデジタルもOMOもコトバの定義はともかく、世界観としては彼らのなかではかなりナチュラルなのである。
 つまり、問題なのはそれより上の世代ということになる。ビフォアデジタル世代というか、携帯電話が普及したのは大人になってから世代というか。そういう人が後天的に意識改革をしなければならないのである。

 ということを考えると、結論としてはもう若い人に任せてしまったほうがいいんじゃないかと思える。へんにオトナがあれやれこれやれと方針決めて指図しても、ビフォアデジタルのバイアスが働くリスクのほうが大きい。諸悪の根源は儒教思想というか「年配者の言うことほど正しい」というテーゼにあるように思う、というのはあまりにも過激的破壊思想だけれど、文化大革命やポル・ポトが、ちょっとでも学のある大人をみーんな粛清してしまったという恐怖の歴史は、ここらへんの問題意識が肥大したものなのはないかなどともチラッと思う。

 令和元年は、日本でもキャッシュレス旋風が吹いた。日本政府も動いたけど、電子マネーやペイ業者の猛烈な展開合戦もすごかったし、楽天、LINE、ソフトバンクあたりが小売、決済、証券、金融、保険あたりをとにかく統合しているのも、本書いうところのアフターデジタル目指してのことなんだろう。キャッシュレスというのは要は経済圏の再構築なんだなと感じる。ぼくはLINEペイを使っているのだけれど、先月あたりからLINEペイでバックされたポイントがコイン還元されなくなり、かわりにLINE証券に紐づけるよう案内がきて、なるほどこうやって経済圏をつくりあげていくのかと思った次第である。しかも、去年に何かのニュースでみたが、LINEがどこかの地方自治体と提携して、ごみの収集情報とか公共料金の決済の代行を始めたときいて、電子行政ってそういうことだよなと思った次第である。そのLINEもYahoo!と経営統合するわけで、こうなってくるとリアルな行政経済圏とは別にもうひとつの行政経済圏ができつつあるような気がする。そういう世の中を与件にしながらいろいろ考えなければならないわけだ。

 以前、会社でひと世代わかい社員と飲んだとき「スマホが普及する以前の営業やマーケティングの経験や知識は、もう持っていたところで邪魔にはなっても役には立たないですね」と言われて慄然とした。「歴史は繰り返さなくても韻は踏むんだよ」とか「温故知新という言葉もあるんだよ」とかココロの中では思ったものの、なんかここでまぜっ返すと老害まっしぐらに思ったので、そうだねー、なるほどねーなどとつぶやきながらビールを飲んだものだった。


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