読書の記録

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「権力」を握る人の法則

2021年10月02日 | ビジネス本
「権力」を握る人の法則
 
ジェフリー・フェファー 訳:村井章子
日経ビジネス文庫
 
 
 世の中にある良きリーダーシップ論とか経営者論というのはきれいごとのうそっぱちで、本来的に組織の上に上り詰めるような人たちというのはこういうことなんだ、ということを看破した本。まあ、その通りな気がします。
 
 ①態度が堂々としていて自信にあふれている
   ②偉い人の前によく現れて目立っている
 ③人にものを頼むことにためらいがない
 ④人との関係構築に余念がない
 ⑤物事をきめるときの重要ファクターになる人や組織がどこかを見抜いてそこに居るか、そことの関係をよくする
 ⑥タフで打たれ強く粘り強い
 ⑦まわりからの評判をよくしておく
 
 
 本書に書いてあることをまとめるとこんなあたりに集約される。そりゃそうだろう、という気もする。
 
 要するに本書は「仕事ができる人」が必ずしも偉くなるとは限らない、ということを言っている。ということは反対に「仕事ができないのに偉くなっちゃう」ことだってあり得るということでもある。
 ただ改めて上記条件を思うに、③④⑤⑥ができない人はやっぱり仕事ができない人なんじゃないかと思うし、⑦な人というのはおおむね仕事ができる人だろう。仕事ができないのに愛される人物というのも稀にはいるが、昭和はともかく令和の今日では厳しい気がする。
 つまり③④⑤⑥⑦を持ち合わせずに「仕事ができる」、すなわち顧客の満足を得て会社の売り上げ業績に貢献する(まぐれの一発ではなく、ちゃんと継続的に)ことができる人というのはあまりいないような気がする。逆に③④⑤⑥⑦がないにもかかわらず「仕事ができる」ように見える人というのがむしろ曲者で、何らかの錯覚か不正の可能性があると思ってよいし、自分はこれらを持ち合わせてないけど仕事ができるぞと自認している人は、実は自分が思うほどには仕事ができる人ではない可能性がある。
 
 となると、実は権力を握ることにおいて「仕事ができる」というのは最低必要条件で、大きな差異を占めるのは①「態度が堂々としていて自信にあふれている」②「偉い人の前によく現れて目立っている」というここに行き着くようにも思う。
 
 これは臆面もなく自己主張できるか、それとも引っ込み思案かということでもある。どうも結局のところはここに尽きてしまうのではないか。本書では「権力があるやつは元気なやつである」と身も蓋もないことを言いのけていて、まあたしかに、覇気がない人間が権力をとれるわけがないのだよな。
 
 だけれど、「分別」とか「無知の知」とか「抑制心」、つまり自信がないのに、胸を張って堂々と元気よく他人をさしおいて偉い人の前にずんずん出ていく「胆力」を持てるかどうかというのは、これ自体がやはりひとつの才能なのかもしれない。この話はホントは自信なんかなくても自信がある態度をとることが大事であるというところに行き着くし、そうすればいつのまにか本当に自信がつく、”事実は態度のあとについてくる”と本書は述べている。いくら攻め込まれようが一切自信ある態度を崩さなかったドナルド・トランプとか安倍晋三とか、あれはやっぱ権力を握る人にとって必要な胆力なのだ。厚顔無恥でなくして権力などとれぬということなのだろう。
 
 やー、やっぱ無理だなあ。ちょっと斜め目線のリーダーシップ本でも読んでみようかと思って手にとったのだが、自分の何が足りないかは自分でもよくわかっているつもりであり、だからこそどこか自信をもって言い切れない。態度で表せない。単純なようでいてこの①と②の壁は大きいなあと思う。
 
 でも、そもそも自分は③④⑤⑥⑦は達成しているのか? お前は仕事が気出る人なのか? となるとそれもまったく自信がないわけだけれど。この本なんと続編があるっぽいのでそちらも読んでみるつもりだ。

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