石原慎太郎さんのデビュー2作目。読了しました。
まず率直な感想。自分が伝えたいことを素直に書いていて、分かりやすい。どんどん読んでしまう。
テクニックを磨くことよりも、
書くべきことを、いかに書くか。
そこに焦点をおいているのが分かる。
たしかに、倫理的に見て問題ありの場面も多いけど、
その方が人物としてリアリティーがある。
当時石原さん23歳?
無名の学生さんだったみたいだし、
これを書いて世間がどんな反応を示すかまで考えて書いてないでしょ。
☆少し、あらすじを書くので、ここからネタバレ記事有りです。
主人公の竜哉、勝手気まま、自分のしたいことだけをしようとする奔放な性格。
ボクシング部なのに、イライラしたら一般人に平気で暴力を振るう。
でも、ボクサーが抱える孤独感、精神と肉体の一体感に惹かれていくことで、
ボクシングに関しては真面目な選手。
夜遊びが好きな仲間達と遊んでいるとき、街で出会った英子(彼女)に強く惹かれていく。
彼女を口説き落とすところまではすごく愛情を見せるけど、
彼女がぞっこんになってしまった瞬間、手のひらを返したように突き放して
激しくののしったり、他の女性とわざと仲良くしたり。挙句に兄にお金で売ってしまう。
彼女が妊娠したとすると、最初はのん気に喜んで産むことに賛成していたけど、
気が変わって絶対堕胎しろという。しかもその時期が4ヶ月ぐらいになったときで、
帝王切開の堕胎手術のあと、彼女は亡くなってしまう。
*
筋だけ見ると、最悪な風俗小説です。その手の類の感想は、
インターネットで検索するといくらでも見つかりますし。
「いきなり左手で相手の鳩尾(みぞおち)を突き」
「竜哉は子供を始末することに決心した。赤ん坊は、スポーツマンとしての彼の妙な気取りの為に殺されたのだ。」
「女は彼等にとって欠くことの出来ぬ装身具であった」
「女、取引き、喧嘩、恐喝と彼等の悪徳が追求される題材は限りが無い」
「よし、あの五千円であ奴(英子)を売ってやらあ」
規制する側からすると、とても分かりやすい。
*
でも、正直な話。こういうひとはどの時代もいる。
言葉は違っても、同じ精神をもった人は必ずいる。
表現の仕方、方法に作者は主目的を置いていない。
それは、話の区切り区切りに見る、
主人公が見ている同時代の人間の本質(うわべの言葉や風潮ではなくて)を感じる
一節が挿入されている。
この部分を作者は云いたかったんだと思う。
「この年頃の彼らにあっては、人間の持つ総ての感情は物質化してしまうのだ。
最も大切な恋すらがそうでなかったか。
大体彼等の内で恋などと云う言葉は、常に戯画的な意味合いでしか使われたことがない。(P34)」
「彼等の示す友情はいかなる場合にも自分の犠牲を伴うことはなかった。
その下には必ず、きっちり計算された貸借対照表がある筈だ。(P35)」
「彼等は徳というものの味気なさと退屈さをいやと云うほど知っている。
・・・彼らはもっと開けっ拡げた生々しい世界を要求する。
一体、人間の生のままの感情を、いちいち物に見立てて測るやりかたを誰が最初にやり出したのだ。(P36)」
もうこの中盤のページがほとんどこの調子。バランスよく書き分ける、
読者を退屈させないように構成を工夫するなんてことは考えてない。
私も書きたいこと、読みたい部分はそういった、人の行動の裏にある、
本質的な情動なのだと思う。
今回受賞した芥川賞作品と比べても、
55年前の芥川賞作品の方がよっぽど面白い。
まず率直な感想。自分が伝えたいことを素直に書いていて、分かりやすい。どんどん読んでしまう。
テクニックを磨くことよりも、
書くべきことを、いかに書くか。
そこに焦点をおいているのが分かる。
たしかに、倫理的に見て問題ありの場面も多いけど、
その方が人物としてリアリティーがある。
当時石原さん23歳?
無名の学生さんだったみたいだし、
これを書いて世間がどんな反応を示すかまで考えて書いてないでしょ。
☆少し、あらすじを書くので、ここからネタバレ記事有りです。
主人公の竜哉、勝手気まま、自分のしたいことだけをしようとする奔放な性格。
ボクシング部なのに、イライラしたら一般人に平気で暴力を振るう。
でも、ボクサーが抱える孤独感、精神と肉体の一体感に惹かれていくことで、
ボクシングに関しては真面目な選手。
夜遊びが好きな仲間達と遊んでいるとき、街で出会った英子(彼女)に強く惹かれていく。
彼女を口説き落とすところまではすごく愛情を見せるけど、
彼女がぞっこんになってしまった瞬間、手のひらを返したように突き放して
激しくののしったり、他の女性とわざと仲良くしたり。挙句に兄にお金で売ってしまう。
彼女が妊娠したとすると、最初はのん気に喜んで産むことに賛成していたけど、
気が変わって絶対堕胎しろという。しかもその時期が4ヶ月ぐらいになったときで、
帝王切開の堕胎手術のあと、彼女は亡くなってしまう。
*
筋だけ見ると、最悪な風俗小説です。その手の類の感想は、
インターネットで検索するといくらでも見つかりますし。
「いきなり左手で相手の鳩尾(みぞおち)を突き」
「竜哉は子供を始末することに決心した。赤ん坊は、スポーツマンとしての彼の妙な気取りの為に殺されたのだ。」
「女は彼等にとって欠くことの出来ぬ装身具であった」
「女、取引き、喧嘩、恐喝と彼等の悪徳が追求される題材は限りが無い」
「よし、あの五千円であ奴(英子)を売ってやらあ」
規制する側からすると、とても分かりやすい。
*
でも、正直な話。こういうひとはどの時代もいる。
言葉は違っても、同じ精神をもった人は必ずいる。
表現の仕方、方法に作者は主目的を置いていない。
それは、話の区切り区切りに見る、
主人公が見ている同時代の人間の本質(うわべの言葉や風潮ではなくて)を感じる
一節が挿入されている。
この部分を作者は云いたかったんだと思う。
「この年頃の彼らにあっては、人間の持つ総ての感情は物質化してしまうのだ。
最も大切な恋すらがそうでなかったか。
大体彼等の内で恋などと云う言葉は、常に戯画的な意味合いでしか使われたことがない。(P34)」
「彼等の示す友情はいかなる場合にも自分の犠牲を伴うことはなかった。
その下には必ず、きっちり計算された貸借対照表がある筈だ。(P35)」
「彼等は徳というものの味気なさと退屈さをいやと云うほど知っている。
・・・彼らはもっと開けっ拡げた生々しい世界を要求する。
一体、人間の生のままの感情を、いちいち物に見立てて測るやりかたを誰が最初にやり出したのだ。(P36)」
もうこの中盤のページがほとんどこの調子。バランスよく書き分ける、
読者を退屈させないように構成を工夫するなんてことは考えてない。
私も書きたいこと、読みたい部分はそういった、人の行動の裏にある、
本質的な情動なのだと思う。
今回受賞した芥川賞作品と比べても、
55年前の芥川賞作品の方がよっぽど面白い。
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