ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

かってにBest10 ④

2018-01-05 | 読書日記
明けましておめでとうございます
今年もどうぞよろしくお願いいたします

2017年に読んだ本の中から
心に残った本を勝手に選ぶBest10

9冊目は「樹脂」(エーネ・リール 2017年9月刊)です。
(2016年の「ガラスの鍵」受賞
「ガラスの鍵賞」:スカンジナヴィア推理作家協会が
北欧5ヶ国の最も優れた推理小説に贈る文学賞)




美しくないものが描かれていて
それが美しい
なんていうことがあるだろうか・・・・

リウはホーエドという島に
父のイェンスと母のマリアと暮らしていた。
学校には行っていない
なぜならリウは死んだことになっていたからだ。

以前はもっと人がいた。
祖父のシーラス
祖母のエルセ
双子の弟のカール
(リウにとってはカールはまだ存在している)
生まれてすぐに死んでしまった妹
リウは知らないけどイェンスの兄のモーエンスも以前にはいたらしい。

父のイェンスは夜にこっそり本島に行って何かを持って来ては
しきりに何かを作っている。
この頃では
本島に行きたがらなくなったイェンスに代わって
リウが採集に行くようになっていた。
リウにとっては
本島に行って
何かを盗って来ることは
森で小動物を獲ることと同じようなものだ。

母のマリアは
巨大に肥満し
ベッドから動けないし
部屋からも出られなくなっていた。

もう家にはリウの居る場所もない。
イェンスが集めたものが家の中に(外にも)
あふれ返っているからだ。
そればかりではなく
ウサギもネズミもハエも
いたるところにいた。

元高校教師で本島で宿屋をやっているロアルは
自分の家のものが無くなっていくことに気付き
見張りを始める。
そして忍び込んで来た子どもを発見する。
リウだった。

それは
静かなリウの暮らしに
ロアルが触れた瞬間だった。

ロアルは島に行ってみる

そして
ロアルはついに島に行って、リウの家の中に入ってしまった。
包装紙からのぞいていたパンは緑色のカビの塊と化し
ゴム手袋からはネズミの糞が乾いた雨のように落ちた。
機械の部品が入った大きな箱が所狭しと並べられ
埃まみれでベトベトした蜘蛛の巣がそこらじゅうにかかっている。
ゴキブリやその他の虫が床から天井までうようよいた。
・・・・

リウの言葉で語られていた世界との
あまりの違い。

これは本当に虐待の物語なのだろうか・・・

読み終えた後に残るのは
(不思議なことに)
静かな美しい世界のすがた
なのに・・・


10冊目は
写真集「トラピスチヌ修道院」(野呂希一 1998年4月刊)




函館にあるトラピスチヌ修道院は修学旅行のコースにもなっている。
でも
修道女さんたちのお姿を見たことはない。

どんなふうに暮らしているのだろう・・・

この写真集には
修道女たちの
春から夏、秋、冬、そして次の春までの
ジャガイモを植え
収穫し
野菜や果物を育て
干草をつくって牛を飼い
クッキーや飴(販売用)をつくり
手分けして食事をつくり
着るものをつくり
掃除をし
1日に7回祈る暮らしが
美しい景色を背景にした
記録されている。

ページの奥から
しんとした空気がただよってくるようでした。







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