ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

火定

2018-01-09 | 読書日記
今年はいい位置に3連休があって
それが終わっていつもの日々に戻った
という感じです

「火定(かじょう)」(澤田瞳子 2017年11月刊)を読みました。




✳︎火定・ 修行者が自ら焼身死することによって入定すること

時は
光明皇后の兄たち藤原4子が権勢を誇っていた時代
4子の父不比等の館は
施薬院と悲田院になっていた。

施薬院に派遣された若い使部(しぶ)の名代(なしろ)は
出世コースから大きく外れた施薬院から
何とか逃げ出そうとしていた。

ある日名代は不思議な男に出会う。
男は
施薬院の医師の指示で名代たちが買おうとしていた
新羅から輸入された薬草を
法外な値で買い取ると
(法外な値を払ったのに)まるでゴミでも扱うように
がさがさと乱雑にまとめ
加えて近くに居た体調の悪そうな(見も知らぬらしい)男を連れて帰って行ったのだ。
男は医師なのか?

その男・諸男(もろお)は元は内薬司(宮中の診療所)の侍医だった。
貧しい家の出ながら懸命に勉学を続け侍医になったのだ。
ところが諸男の熱心な勤めぶりを妬む者によって
あらぬ罪を着せられ
牢に入れられた。
恩赦によってようやく牢を出た後は
もの好きな藤原房前に拾われ
家従になっていた。

諸男が牢で出会った宇須(うず)と虫麻呂
一方施薬院の
医師の綱手(つなで)
事務方の広道
絹代、真公、隆英・・・

彼らは
高熱を発した後に
一度けろりと治って
それから身体中に発疹ができる
という謎の病に遭遇する。
病はたちまちみやこ中に広がり
藤原4子も
次々に病に倒れて行く。

非常時が
ひとの奥にあるものを炙り出していく
・・・・

名代の成長譚とも読めるけれど
追って読んでしまうのは
やはり諸男。

諸男の最後の行動に
共感を覚えます。

ドロドロに溶けた死体の描写は
付いていけるかどうか分かれる所でしょう。

かってに直木賞トーナメント
「銀河鉄道の父」対「火定」では
2回戦進出は「銀河鉄道の父」になりました。







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