ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「天気に負けないカラダ大全」

2023-11-30 | 読書日記

低気圧が苦手です。
と言ってばかりもいられない……、
ので
「天気に負けないカラダ大全」(小越久美 小林弘幸著 2023年9月 サンマーク出版)を読んでみました。

「天気によって
体調も気分も悪くなる
そんな私は低気圧女子で」
という小越さん(気象予報士)と
低気圧男子だという小林さん(医学部教授)が

1章 お天気と自律神経の関係
2章 天気を味方にするための自律神経サポート
3章 低気圧不調に悩む人のための自律神経予報
4章 ホルモンバランスと自律神経とお天気の関係
という構成で書いています。

主な内容は
◯自分の傾向を知ることが
来年のあなたの財産になる
(だからセルフチェック表をつけよう
見本付き)

◯低気圧を怖れてばかりいても……
敵を知ろう
(季節ごとの天気の解説)

◯低気圧に影響されにくい
打たれ強い体になろう
(交感神経と副交感神経の底上げ方法)

小林先生は言っています。
「自律神経の研究を始めてからというもの
天気というものは
実におもしろいものだなあと感じています
雨の日に狩に行くと危険が増したりするから
体を休めるように
太古の昔からプログラミングされているのだろうか

どうぞたくさん空を見上げて
天気と仲良くなってください」

(低気圧を知って
また来たね〜
くらいになってみたいと思います)



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「台形日誌」

2023-11-28 | 読書日記

「台形日誌」(伏木庸平著 2023年5月 晶文社)を読みました。

「台形」?
「台形」というのは国立でやっている予約制の食べ物屋の名前。

エッセーのつもりで読みはじめたら
プリンが食べたいとねだる謎の電話の話や
首吊りパフォーマンスの家で出てきた得体の知れない鍋の話や
刑事が来て監視カメラを設置させてくれと言ったという話に
え、ほんとのことなの?
でも、写真があるし……
と、どう読んでいいか分からなくなる。

「僕らはどこへ行くにも
暗い夜とそれを越えた明るい朝を体験しないことには
その土地が見えてこないと思っているから」
と旅では必ず一泊する。

「料理って栄養だけじゃないんだよ
美味しいが正解だけど
美味しいだけじゃ足りないんだよ」

著者は朝4時に起きて刺繍をする。
「毎日糸を刺すという
生活と同化した行為によって現れてくる糸の塊」をつくっている。
(著者はアーティスト)



コロナの間
(店は休み)
奥さんが毎日焼く台湾カステラを食べまくる。

毎朝起き抜けはカフェオレ。

一つしかないぐりとぐらのマグカップを
夫婦で早い者勝ちで使う。
(わたしも
と検索したら
骨董屋にしかないものだったらしい。
ああ、欲しい……)

風変わりなレシピつき。

 

 

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「枝元なほみのめし炊き日記」

2023-11-26 | 読書日記

「夜のパン屋さん」(売れ残ったパンを販売する)活動をしている料理研究家の枝元なほみさんを
(テレビで)見かけなくなったと思ったら
コロナに罹って以後酸素が必要になっている
らしい

「枝元なほみのめし炊き日記」(枝元なほみ著 2023年9月 農文協)を読みました。

コロナでいろいろなことが変わった高校生、中学生を描いた小説の余韻が残っている
うちに
コロナでいろいろなことが変わったおとなのエッセーを読んでしまった。

ある学校でゲストティーチャーをすることになったら
「家庭科の先生」と紹介されてもやもやしたという。
(わたしは家庭科という教科の奥行きと幅を感じているので
そうでもありません)
でも、枝元さんは
炊事洗濯家事育児が大好きなのだ。
(子どもはいない)

料理が大好きなのに
今、枝元さんはガス火で料理が出来ないでいる。
(少しは可能)
「コロナ陽性から肺炎が悪化
いろいろな管につながって集中治療室へ
そしてとうとう絶対安静になりました」

「つねに鼻の管から酸素を補う状態となって」

「これはこれでなんだか面白い
そう思ってやっていかなくちゃ
ですよね
体の声に耳を澄まし
食べたいものを考え
自分を甘やかしたり励ましたりしながら」

親友の伊藤比呂美さんによれば
ガス火で料理が出来ないならと
酸素を付けることを拒否していたけれど
伊藤さんが空港で見かけた酸素男
(背が高くて、知的な感じで
着こなしもよくて、シュッとして
酸素の管を鼻につけて
まっすぐ前向いて歩いてて、かっこよかった)
の話を聞いて酸素を付けるようになったそうです。

そういう人が見える伊藤さんは
カッコいい。
酸素を付けながら料理をする枝元さんもカッコいい。

応援しています。

 

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「この夏の星を見る」

2023-11-24 | 読書日記

「この夏の星を見る」(辻村深月著 2023年6月 角川書店)を読みました。

コロナの時のことを記録しておかなくては
と思ったけれど
書いていない。
そして、気がつけば忘れかけている……

中学生と高校生を主人公にした
コロナで学校が休校になったあたりの話です。
(辻村さん、さすがです)

地元の中学校に入学した真宙[まひろ)は
学校に行くのが嫌になっている。
コロナ休校が有難いくらいだ。
学校は、街中にある学年ひとクラスの小さな中学校で
入学してみたら学年に男子は自分一人なのだ。
人数が少ないせいで
サッカー部もない……

高校生の亜沙は
突然休校になって
部活も出来なくなったことに愕然としていた。
亜沙の所属している天文部でも
最大のイベント夏合宿が許可されないことになった。
夏合宿どころか通常の部活動さえも
出来ないかもしれない……

五島列島の高校生円華(まどか)は
家が旅館を営んでいて
東京からの観光客を受け入れていることで
友だちからも部活のメンバーからも
距離を置かれるようになってしまっている。
そんな時
同じクラスの武藤から
島の天文台で行われる星空観測会に誘われる……

コロナの時期の
「密を避ける」ためにしていたこと
(もうだいぶ忘れている)
行動が規制されていたこと
などがリアル。
リモートでつながるようになったことも
リアルに描かれている。

望遠鏡で星を見る
見えた!
時の感激が丁寧に描かれていて
リモートで行われた「スターキャッチコンテスト」
(望遠鏡で星を見つける競技の大会)までの
コツコツとした積み上げ方に好感が持てる。

ロマンス味もあって
登場人物と同世代の読者が満足できるものなっています。



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「これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話」

2023-11-22 | 読書日記

「アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?」の
カトリーン・キラス・マルサルの
「これまでの経済で無視されてきた数々のアイデアの話 イノベーションとジェンダー」(2023年8月 河出書房新社)を読みました。



タイトルにはアイデアとあるけれど
う〜ん、見方といったところでしょうか。

最初に出てくるキャスター付きスーツケースの話が面白い。
(最近は、キャスターの付かないスーツケースを持っている人はほぼ皆無)
スーツケースとキャスターそれぞれは
ずっと以前からあった。
それなのに
なぜキャスター付きスーツケースは「存在」しなかったのだろうか?
文化がなかったからだと著者は言う。
旅行は召使を連れて行くようなお金持ちのものだったから
女性は一人では旅をするものではなく
男たるもの重いスーツケースぐらい持てなくてはならなかったから
駅にポーターがいたから
などなど
「女性が自分で重いスーツケースを持つ」文化が出来たから
キャスター付きスーツケースが一般的になったのだ。

デパートがこれほど流行ったのは
(主に欧米で)女性が男性の付き添いなしに
一人で出歩くことの出来る場所
(それ以前は無かった)
として設定したことが大きい。

エンゲルスは友人から聞いた話を本に書いた。
その友人は、ある日ランカスターに住む知人を訪ねた。
すると、その男は地下室で妻の靴下を繕っていた。
男は泣きながら
「工場が機械化されたため自分は職を失い
妻が働きに出るようになったので
(女性は賃金が安かったので雇われた)
自分が家で家事をしているのだ」
と言った。
激しく心を揺さぶられた友人は
そのことをエンゲルスへの手紙に書き
このエピソードはエンゲルスの本に登場した。

著者は言う。
この男の妻は
このことをどう思っていたのだろう。
帰って来て、夫を励ましていた?
働かない夫を軽蔑した?
できれば一家にもう少し収入があり、夫が明るくなればよし、と思っていた?
なぜエンゲルスは男の妻に質問しなかったのだろうか?
(妻にインタビューしてから書けばよかったのに)

私たちは、エンゲルスがこのことを書いた第一機械化時代に似た
第二機械化時代に直面している。
AIによって自分の仕事はいずれ無くなる
と思っている人も多い。
(著者は、ニンゲンの残るポイントは身体性だと言っている。
ちなみに茂木健一郎もそう言っている)

第二機械化時代に直面している今
私たちは
「男の妻」の言い分を聞き忘れてはならない
と著者は言う。

そこはかとないユーモアが魅力

 

 

 

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「漢詩の手帳 いつか たこぶねになる日」

2023-11-20 | 読書日記

「漢詩の手帳 いつか たこぶねになる日」(小津夜景著 2020年11月 素粒社)を読みました。

(小学生のころ海辺に住んでいたので
友だちからよくたこぶねをもらったものでした)

漢詩……
著者はフランス在住の俳人です。
漢詩というと高校の時の試験に出た書き下し文を思い浮かべるけれど
それは訳文ではない
と著者は言う。
(なるほど)

漢詩と訳文とエッセーと俳句で構成されている。

壊れた時計を売っている老人から時計を3つ買った。
「コーヒーを飲んでいて
ふと、こんなふうに
ばらばらの時を奏でる時計に囲まれて一服するのは
ものすごく瞑想的なクリエーションなんじゃないか
との思いにかられる」

「寒くなったわたしは
気をまぎらすために
おいしいハムとクロワッサンのことを考えた
さみしさもどうにかしたくて
サーカスのパレードを胸いっぱいに思い描いた」

「空気が好きで
空気にまつわるあれこれについて
日々情報を集めている」

砂糖漬けのお店で
「(砂糖漬けは)ながめるだけで心が安らぎ浄化され
神聖な心もちになる点は
たしかにアメジストの原石と向き合った感じと変わらない
わたしは、わあ、まるでたましいの薬だね
と心の中でつぶやいた」

「わたしにとって漢詩を翻訳してみることは
貝塚みたいな古道具市で
よくわからない謎のガラクタを購入する遊びと変わらない」

「中国では文字の書かれた反故を惜字紙と呼び
それを敬って
専用の焼却炉(惜字炉)で焼いてきた」


抜き書きする手が止まりません。

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「自分のために料理を作る」

2023-11-18 | 読書日記

「自分のために料理を作る 自炊からはじまるケアの話」(山口祐加著 2023年8月 晶文社)を読みました。

(私も自分ひとりの食事だと
何でもいいや
になって
あるもので済ませてしまいがち
なので)

6人の応募者が
(管理栄養士
毎日夕食は作っている在宅勤務の夫
ひとり暮らしの還暦近い女性
など)
山口さんとの料理や会話を通して
変わっていくところが読みどころです。

「今の世界で生きている人が
仕事であってもなくても
自分のやりたいことをやって楽しく生きてほしい
というのは常々思っている」著者が
応募者にまず言うのは
「自分に
何を食べたい?と聞いてみること」
(そう言えば、自分が何を食べたいかを
もう長いこと考えていなかったなぁ)

自分に聞く
の発展形として
一品ずつ作るという方法も提案している
(小料理屋方式)
一品目を作る→食べる
次に何を食べたいかと自分に聞く→作る→食べる
……
という方法だ。

問題を要素に分解して考えるのが上手い著者は
終盤ではついに
「料理は外から見えないし
食べたらなくなっちゃう。
自分からしか反応が返ってこない上に
誰にも見られないことに対して
どれくらい時間やエネルギーを使えるのか
すごく生々しくてリアルな問題です」
というところまで到達する。

明るくて
軽やか。

 

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「源氏物語を楽しむための王朝貴族入門」

2023-11-16 | 読書日記

「歴史文化ライブラリー578   源氏物語を楽しむための王朝貴族入門」(繁田信一著 2023年10月 吉川弘文館)

来年の大河ドラマの影響で
「源氏物語」系の本が次々に出版されているので
その中の一冊を読んでみました。

「歴史文化ライブラリー」
の中の一冊だそうだけれど
意外に読みやすい。

光源氏の母の桐壺更衣は
本当は「壺」(部屋)を持てる身分ではなかった。
(え?)
女御は「壺」に住むことが出来たけれど
更衣は宮廷のスタッフという格なので
(天皇の寵愛を受けることの出来るスタッフ)
本来はスタッフ部屋に住んでいるはずだったけれど
天皇の寵愛を受けて一番遠い桐壺に部屋を与えられた
とか

天皇の皇子は宮廷で育てられるのではなくて
母の里方で育てられるのが普通なので
光源氏の着袴の儀が宮廷で
天皇自らの指揮のもとに行われたのは
とても異例なことだった
とか

天皇は朝早く起きて
身を清め
朝食後は学問をするなど
なかなかハードな生活だったので
早く退位して上皇になってのんびり暮らしたいと思う
天皇も多かった
とか

普通は皇女がなる伊勢斎宮は
(伊勢が)都から遠いので誰も訪ねて来ないし
仏教色の排除された
(たぶん日頃から仏に頼っているので)
生活をしなくてはならないしで
とても不人気だった
とか

意外なことばかり。

学者の著作らしく資料もたっぷりで信頼がおける。

楽しみました。


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「でぃすぺる」

2023-11-12 | 読書日記

「でぃすぺる」(今村昌弘著 2023年9月 文藝春秋社)を読みました。

「屍人荘の殺人」の著者の新作
(ディスペルは闇を晴らすという意味)
小学6年生が主人公ということは
児童向けなんでしょうか…
「屍人荘」と同じように、ばたばたと人が死んでゆく
けれど

それは、6年生の2学期の係決めの時だった。
このところオカルトにはまっていたユースケは
掲示係に立候補した。
掲示係になれば壁新聞が作れる
→みんなにオカルトの話を読んでもらえる。
と思ってのことだった。

ところが驚いたことに1学期まで学級委員長だったサツキも
掲示係に立候補したのだ。
それに転校生のミナが加わって
掲示係は3人になった。

サツキは
従姉の(殺された)マリ姉がパソコンに遺した
「奥郷町の七不思議」について調べたいのだという。
いまだに分かっていないマリ姉の死の真相が知りたい…

3人は七不思議を調べて、壁新聞に書くことにした。
ユースケは超常現象として
サツキは現実と設定しての推理を書いて
どちらが納得できるかを
ミナが審判になってジャッジするのだ。

七不思議を調べていくにつれて
推理するべき要素がどんどん増えていく
ところが新しい。
相変わらずバタバタと人が死ぬところは
好みではありませんが
読者を子ども扱いして
手加減しないところはいいと思います。
(今どきの小学校では
一人一台タブレットを持っているので
パソコン室に行かなくても検索できるし
写真をプリントアウトしなくても
電子新聞に取り込み放題だと思うのですが)

読後のぞわぞわ感満点
暗いところが怖くなりました。

 

 

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「無限の月」

2023-11-07 | 読書日記

「ゴリラ裁判の日」(第64回メフィスト賞の受賞作)の須藤古都離の新作
「無限の月」(須藤古都離著 2023年7月 講談社)を読みました。



須藤古都離は先祖返りをしたような作家だと思う。
まだラジオやテレビの無かった時代
「語り」が娯楽だった時代
(源氏物語だって一人の女房が声に出して読むのを
皆が聞くものだったというから)
に返ったかのように
自分が経験していないことを
目の前に立ち現れるように「語る」作家だ
と「ゴリラ裁判の日」読んで思った。

今作「無限の月」でも
その才能は遺憾無く発揮される。

ある夜
徐春洋の
家中の家電のスイッチが一斉にonになる。
(スマホ管理)
そして、春洋が設定をした村の他の家でも
同じことが起こる。
春洋のスマホには
「助けてくれ」の文字が流れていた……

聡美は夫と離婚しようと思っていた。
ある日、家の洗面所で自分のものではない口紅を見つけたからだ。
夫の藤浪はタイダル社のCEO
タイダル社は脳に埋め込んだ機械によって
義手などを自由に動かせるというBMIのアプリを開発した会社だ……

道路に水で書く書家の書に魅せられた少女・張月は
書を学ぶようになる。
決して敵わないと思っていた同級生の劉項と
張月は距離を縮めていく……

ダイダル社の開発したカチューシャを装着した藤浪に
そして張月に
不思議な現象が起こる……

ホモ・コネクサ……

もう少し
要素を整理した方が
まとまったのではないでしょうか。

次作は2024年春に刊行予定だそうです。
期待しています。

 

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