オルレアが咲いています。
「父を撃った12の銃弾」(ティンティ著 2021年2月 文藝春秋社刊)を読みました。
銃と暴力にあふれているのに
美しい
そんな一冊です。
父のサミュエル・ホーリーの体には12の銃弾の跡がある。
娘のルーは12才。
父と娘は、2人きりで暮らしている。
娘のルーの物語と
父のホーリーの物語が交互に語られる
(12の銃弾の話が1つまた1つと)
という構成になっている。
危ない「仕事」をしているホーリーは
ある日、若い喪服姿の娘・リリーと出会う。
父親の葬儀の帰りだというリリーは
撃たれたホーリーを病院に連れて行き
やがて2人は結婚し
ルーが生まれる。
ルーが赤ん坊の時リリーは溺れ死ぬ。
転々と移り住まなくてはならないホーリーとルーの暮らし。
ホーリーは新しい住まいに着く度に
バスルームにリリーの祭壇を設える。
写真、使いかけのシャンプー、口紅……
なぜ2人は転々としなくてはならないのか
泳ぎの得意だったリリーが
波の静かな湖で溺れ死んだのは何故なのか
リリーの母に預けたルーが
4才になるまでホーリーが一度も会いに来なかったのは何故なのか
……
ルーの中で疑念がふくらんでいく。
ホーリーが「仕事」をする場所の描写が素晴らしい。
「入ってみると、ドールハウスのなかにいる巨人になった気がした。
平屋建てで天井は低く
家具も丈の低いものばかり。
火が燃えている暖炉、薪を入れた籠、すりきれたソファに2脚の椅子…」
そこが「仕事」相手の家だ。
別の「仕事」相手のトレーラーは
「奥のベッドにはキルトがかけられ
小型のキッチンにはプロパンのコンロがあって
ラックからマグがずらりと下がっている。
隅にあるテーブルにはうずたかく積まれた古いカントリーのレコード…」
また別の「仕事」場所はアラスカの氷河だった。
「ここは氷河が生まれる場所だった。
氷河は巨大な、かすかに波打った青い氷の壁で
高さ100メートル、5キロにわたって続き
その下ではコッパー川が沸き返っている…」
(これみよがしではない
人物に視点に沿った描写)
ルーが誕生日にもらう天体望遠鏡
リリーの母親の染めと織の道具
「仕事」相手の持っている古代の水時計クレプシドラ
……
悲しいほど美しいものたちが
散りばめられている。
今年の本屋大賞の翻訳部門賞になるのではないかな
と思います。
「父を撃った12の銃弾」(ティンティ著 2021年2月 文藝春秋社刊)を読みました。
銃と暴力にあふれているのに
美しい
そんな一冊です。
父のサミュエル・ホーリーの体には12の銃弾の跡がある。
娘のルーは12才。
父と娘は、2人きりで暮らしている。
娘のルーの物語と
父のホーリーの物語が交互に語られる
(12の銃弾の話が1つまた1つと)
という構成になっている。
危ない「仕事」をしているホーリーは
ある日、若い喪服姿の娘・リリーと出会う。
父親の葬儀の帰りだというリリーは
撃たれたホーリーを病院に連れて行き
やがて2人は結婚し
ルーが生まれる。
ルーが赤ん坊の時リリーは溺れ死ぬ。
転々と移り住まなくてはならないホーリーとルーの暮らし。
ホーリーは新しい住まいに着く度に
バスルームにリリーの祭壇を設える。
写真、使いかけのシャンプー、口紅……
なぜ2人は転々としなくてはならないのか
泳ぎの得意だったリリーが
波の静かな湖で溺れ死んだのは何故なのか
リリーの母に預けたルーが
4才になるまでホーリーが一度も会いに来なかったのは何故なのか
……
ルーの中で疑念がふくらんでいく。
ホーリーが「仕事」をする場所の描写が素晴らしい。
「入ってみると、ドールハウスのなかにいる巨人になった気がした。
平屋建てで天井は低く
家具も丈の低いものばかり。
火が燃えている暖炉、薪を入れた籠、すりきれたソファに2脚の椅子…」
そこが「仕事」相手の家だ。
別の「仕事」相手のトレーラーは
「奥のベッドにはキルトがかけられ
小型のキッチンにはプロパンのコンロがあって
ラックからマグがずらりと下がっている。
隅にあるテーブルにはうずたかく積まれた古いカントリーのレコード…」
また別の「仕事」場所はアラスカの氷河だった。
「ここは氷河が生まれる場所だった。
氷河は巨大な、かすかに波打った青い氷の壁で
高さ100メートル、5キロにわたって続き
その下ではコッパー川が沸き返っている…」
(これみよがしではない
人物に視点に沿った描写)
ルーが誕生日にもらう天体望遠鏡
リリーの母親の染めと織の道具
「仕事」相手の持っている古代の水時計クレプシドラ
……
悲しいほど美しいものたちが
散りばめられている。
今年の本屋大賞の翻訳部門賞になるのではないかな
と思います。