ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「レディ・ムラサキのティーパーティ」 毱矢まりえ 森山恵

2024-07-17 | 読書日記

「レディ・ムラサキのティーパーティ らせん訳源氏物語」(毱矢まりえ 森山恵著 2024年2月 講談社 300p)を読みました。

レディ・ムラサキは紫式部のことです。

1925年にアーサー・ウェイリーが訳した源氏物語「The Tale of Genji」を
さらに日本語に訳し戻した「源氏物語 A・ウェイリー版」(左右社)の訳者
毱矢まりえ・森山恵姉妹の翻訳話です。

毱矢姉妹の訳では、冒頭は
「いつの時代のことでしたか。
あるエンペラーの宮廷での物語でございます」
(!)
となっている。

エンペラーは恋に落ちる
え?
寵愛は恋だったの
(光源氏の母・桐壺更衣は
宮中での嫌がらせにあって死んでしまうけれど)
桐壺更衣は帝をどう思っていたのだろう?
はたして帝に恋をしていたのだろうか?
(ご寵愛は、ちょっと迷惑だった?)
などと言葉が違えば考えることも違ってくる。

中でも末摘花について書いている章が面白い。
末摘花の容姿
背が高く、肩のラインがくっきりして、鼻は高く、色が白い
を外国人の血が入っていたから?
と推理している。
紫式部は(ちょうど今ドラマでもやっているけど)
越前に行って、宋の人とも交流があった。
ひょっとして、そういう容貌の人を見たことがあるのでは?
と姉妹は推理する。

末摘花は「待つ」人でもある。
源氏が須磨に行ってしまった後も
ひたすらに待ち続ける。
屋敷は草に埋もれてしまうほどで
そこに通りかかった帰還した源氏に発見されるくだりは
「眠り姫」の物語のようだと姉妹は言う。

末摘花の純粋な「待ち」に心を動かされた源氏は
末摘花の屋敷に手を入れてくれ
最後には自分の屋敷に迎え入れる。
源氏が流謫の苦労によって精神的に成長したことが
読み取れるそうだ。
(なるほど)

2人は言う。
「百年前のイギリス
ひとり孤独に紫式部と対話しながら
千年前の未知の物語に向かい合ったウェイリー。
わたしたちも翻訳に向かったのである。
紫式部の声に耳を澄ませながら
ウェイリーの声に耳を澄ませながら」

らせん訳「源氏物語」を
読んでみたくなりました。

 

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3 コメント

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買っちゃいました (J)
2024-06-21 21:44:11
ウェイリー版源氏物語、買っちゃいました。
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Jさま (橙子)
2024-06-22 06:26:27
え、ええ!
すごい!
英語に堪能なのは存じてましたが、Genjiとは!
いろいろ知りたい!
わたしは、らせん訳を図書館に予約しました。
若い頃は機微が分からず、現代語訳を読んでも、なんで?と思うことばかりだったけど、この年になって読んだら、また違った景色が見えてくるかも?と期待して
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あわせて日本語訳も (J)
2024-06-22 10:49:29
kindleで100円だったので、つい。
電子書籍の良い所は機械翻訳の助けを借りられることです。(ペンダーウィックの5巻も、ほぼ機械に読んでもらいました)
あわせて日本語訳も購入。気になるところだけ、ちょこちょこつまみ食いしてみます。
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