なかなか立ち止まることのない日常
なので
せめて
と
立ち止まり本を読みました。
「世界の適切な保存」(永井玲衣著 2024年7月 講談社 285p)
著者は哲学者
子どもから大人までの哲学対話をする会を開いている。
「たまたま配られる」という章
美大に通う友だちが
「普通の大学が見たい」ということで著者の大学に来る
と
古ぼけた自分の大学が
なぜか
風格を持った佇まいで歓迎し
貧弱な木々は青々と葉を茂らせ
太陽は光を当てて緑色を浮かび上がらせ
すれ違う学生たちは英語で会話をし
(グローバル教育に力を注いでいるので留学生がいる)
すぐ後ろを歩く教授は
絵本に出てくるような白髪の老人で……
著者は思う
「世界が本気を出してくれたのだ」
「世界は移り気である
無垢な友だちを喜ばせたかと思えば
まっすぐ立とうとするわたしの膝裏に
振動を与えてかくんとバランスを崩させることもある」
著者は
よくよく考えるとそれって何なんだ
と思えるような瞬間を「哲学モメント」と名付けて収集している。
古代の人が現代にタイムスリップして来たとき
もっとも驚くのは
天気が予知されて
それを当たり前のように現代人が享受しているという事態なのではないか。
(確かに空も見ないで天気予報を見ている)
天気予報は詩のような言葉遣いをする。
「変わりやすい空」
「天気が下り坂」
哲学者の村上靖彦さんの
「インタビューで相手の話がとまる瞬間ってすごく大事で
いったん詰まっちゃって何も語れなくなった状態の
次に出てくる話って
大事なことが多いんです」
に共感すると著者は言う。
詩と植物と念入りな散歩が好き
という著者
文中に多くの短歌や俳句、詩が挟まれている。
やっつけ仕事のような散歩を
もう少し丁寧にしたいと思います。