ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「あらゆることは今起こる」 柴崎友香

2024-07-01 | 読書日記

「あらゆることは今起こる」(柴崎友香著 2024年5月 医学書員 291p)を読みました。

「シリーズ ケアをひらく」の一冊です。

A DHDと診断された著者は
自閉の人が書いた本は多いのに
ADHDの人の書いた本はほとんどないことに気がつく。
それならば書いてみよう。

ADHDには
行動の多動もあるけれど
脳の多動もある
と著者は言う。

脳がたくさんの考えで溢れ返って
気がつけば何時間も何もしないで過ぎている。
1日はあっという間で
何もできないままに終わる。
脳が疲れるので
昼寝も必要だ。

一般的な脳は脳が励ましの歌を歌ってくれるけれど
ADHDの人の脳のコーラス隊は歌ってくれない。

でも、作家としてこれはいいと思うのは
「わかる」がすぐに来ないで
「ようわからんけどわかりそうな気もする」
「わからんけどここら辺になにかありそうな気がする」に心惹かれ
大量に溜め込んでいることだ。
何年も、ときに何十年も。
小説をよむのは「わからないこと」のストックを増やすことだと思っている。
(「わからないことを楽しんだり味わったりできるのは
人間だけです」と脳科学者の中野信子さんが言っていた)

本書は
「同時多発的にいろいろな考えが湧いてくる」著者の脳
そのものの構成になっているのが面白い。

つくづく
人間の脳は
一つとして同じものはない
ほど多様なのだと思わせられる。
(ADHDと一口に言っても、人によって違う)
これが
人類がここまで絶滅せずに来た要因なのかもしれない。

自分の脳の特性を知り
いかにそれを活かすか
が大事なのだと
改めて思いました。

 

 

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