ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「女を書けない文豪たち」 著者はイタリア人

2023-01-16 | 読書日記

「女を書けない文豪(オトコ)たち」(イザベラ・ディオニシオ著 2022年10月 角川書店刊)を読みました。

さぞや、けなされているんだろうな文豪たち
森鴎外
田山花袋
夏目漱石
太宰治
谷崎潤一郎
……

と思ったけど
日本の近代文学が大好きで日本に来た
という著者は
けなすというよりは
絶賛しつつ、まぁ、仕方ないわね
くらいのスタンス。

例えば夏目漱石の「こころ」
主人公が崇拝する「先生」は
若き日、下宿の娘さんである静さんに心惹かれる。
その描写は「I love you」を
「月が綺麗ですね」と訳した漱石の真骨頂。
静さんに対して
「私(先生)は喜んで下手な生花を眺めては、まずそうな琴の音に耳を傾けました」
となる。
「I love you」なのだ。
ところが静さんの気持ちはちっとも分からない。
窮状を見かねて「先生」が同宿させた同郷のKと静さんが
親しくなるのでは…と「先生」は気が気ではない。
ついに「先生」は結婚を申し込む。

Kが「先生」と静さんの婚約を知って
下宿の部屋で自殺してしまっても
それに対する描写はない。
静さんが好きだったのはKなのか「先生」なのか……
(下宿の部屋で自殺するなんて、ちょっと当てつけがましくないだろうか
それに恩ある下宿を事故物件しにてしまうことでは?)
女性の気持ちは何も書かれていない
と著者は言う。

裏返して
女性の側から書いてみたら面白いかもしれません。
森鴎外の「舞姫」も
田山花袋の「蒲団」も
太宰治の「ヴィヨンの妻」も
谷崎潤一郎の「痴人の愛」も
……





 

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