三酔人の独り言

ルポライター・星徹のブログです。歴史認識と国内政治に関わる問題を中心に。他のテーマについても。

国際司法裁判所の「対イスラエル」命令に反する日本など

2024-01-30 14:41:59 | 国際政治
 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のスタッフ複数〔*今のところ12人〕が昨年(2023年)10/7のイスラエルへの奇襲攻撃に関与した疑いがあるとして、米国・英国・ドイツなど9カ国の他、日本も加わり、「UNRWAへの追加資金拠出の一時停止」を発表した。

 UNRWA側は調査を始め、9人のスタッフを既に解雇しており、外部機関による調査も進めるという。

「NHK NEWS WEB」2024.1.29「国連機関スタッフ 攻撃関与疑い 日本もUNRWAへの資金拠出停止」

 私は昨日、当ブログ2024.1.29「UNRWAへの資金拠出停止の悪意」で、これら「UNRWAへの追加資金拠出の一時停止」を表明した諸国(*日本も含めて)のあり方を批判した。今回は、その続き。

 UNRWAのフィリップ=ラザリーニ事務局長は1/27、これら9カ国〔*この段階では、まだ日本は含まれていない〕の措置を受け、「声明」を含めて次のように語った。

「本日をもって9カ国がUNRWAへの資金拠出を一時停止した。その決定のため、この地域全域と特にガザ地区における人道支援活動の継続が、脅かされている」「命を救う私たちの支援活動が終わろうとしている」

「UNRWAはガザにおける主要な人道支援機関で、200万人以上がただ生き延びるためにUNRWAを必要としている。飢饉(ききん)が迫りくるなか、大勢が空腹を抱えている。UNRWAの避難所には100万人以上が暮らしている」

「少数の職員に対する疑惑への反応で、当機関への資金拠出が停止されるのはショッキングだ。UNRWAはその職員たちの契約を切り、第三者機関による透明性のある調査を依頼するといった対応を、ただちにとったにもかかわらず、拠出停止となった」

「一部の人間が犯罪行為で疑われているからといって、この機関と一つのコミュニティーの全員を制裁するなど、まったく無責任なことだ。特に、戦時において。この地域全体で大勢が住む場所を失い、政治的危機が起きている最中において」

 また、ラザリーニ氏は「UNRWAはその全職員の名簿を毎年、イスラエルを含むホスト国と共有している。特定のスタッフについて懸念を指摘されたことは一度もない」としたうえで、国連事務局の内部監査室がすでに「極悪な疑い」について調査に着手している、と説明した。

*以上、ラザリーニ氏の発言・「声明」は、「BBC NEWS JAPAN」2024.1.28「国連のパレスチナ難民救済機関、資金拠出停止の9カ国に再考求める 職員数人が攻撃関与の疑惑」からの引用。

 当ブログ2024.1.29「UNRWAへの資金拠出停止の悪意」の中で私は、今回の「資金拠出の一時停止」の動きについて、イスラエルが「国際司法裁判所にジェノサイド(集団殺害)の嫌疑で南アフリカ共和国に提訴されたことも、関係しているのではないか」と述べた。

 この提訴の中で南アは、ガザ地区における「イスラエルによる軍事作戦の即時停止などの暫定措置」も求めていた。国際司法裁判所はこれに関する命令を1/26に出した。

「INTERNATIONAL COURT OF JUSTICE」2024.1.26「Press Release」(英文)を参照されたい。

 この中で「イスラエルに対する軍事作戦の停止」命令が出されなかったのは、極めて残念だ。だが、「ジェノサイドを防ぐための全ての措置を講じる」ことなどは命じられた〔暫定措置(1)〕。

 また暫定措置(4)では、「イスラエルは、ガザ地区のパレスチナ人が直面する不利な生活状況に対処するため、緊急に必要とされる基本サービスと人道支援の提供を可能にする即時かつ効果的な措置を講じるものとする」とも命じられている。

 この中の「緊急に必要とされる基本サービスと人道支援の提供」を妨害している主体は、明らかにイスラエル政府と同軍だ。そして、このガザ地区の苛酷な状況下で、命懸けで「緊急に必要とされる基本サービスと人道支援の提供」をしようと奮闘している主体は、明らかにUNRWAだ。

 確かに、UNRWAにも改善すべき点があるのかもしれない。だが、それと今回の「資金拠出の一時停止」措置の間には、何の論理的因果関係もないはずだ。

 日本を含む諸国によるUNRWAへの「資金拠出の一時停止」措置は、今回の国際司法裁判所による暫定措置命令(4)を明らかに妨害する行為であり〔*直接的な因果関係がある〕、ガザ地区の人々の人権を著しく毀損する行為だ。加えて、パレスチナ人を虐殺・抑圧し続けるイスラエルの暴挙を後押しする行為でもある〔暫定措置(1)などを妨害〕。

 日本政府も、他の諸国政府も、こうした事実を踏まえ、UNRWAに対する資金拠出停止措置を一刻も早く撤回すべきだ。また、他の国がこうした「愚かで非人道的な措置」に加わらぬよう、強く求める。
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