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映画「ノマドランド」

2021-04-29 | 映画
2020年米ドラマ映画、原題「Nomadland」クロエ・ジャオ監督作品、原作2017年のジェシカ・ブルーダー著ノンフィクション『ノマド 漂流する高齢労働者たち』。アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービー。ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れたネバタ州エンパイアの家(社宅住い)を失ってしまう。バンに亡くなった夫との思い出と生活のすべてを詰め込んだ彼女は、「現代の遊牧民(ノマド)」として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。2008年リーマンショックが全世界を襲った。その影響は現役世代だけではなく、リタイア世代にも容赦なく降りかかり、多くの高齢者が家を手放すことになったアメリカの様子が描かれている。家を失った彼等は自家用車で寝泊まりし、働く口を求めて全米各地を動き回っていた。専門職での経験があったとしても、それを活かせるような職がほとんどなく、安い時給で過酷な肉体労働に従事するほかなかったのだ。繁茂期のアマゾンでの配送作業、収穫期の農作業、ハンバーガーショップでのアルバイトなどや、突然の病気、郊外でのタイヤのパンク、車の故障、夜の宿泊駐車で車を移動させられたりと生活の過酷さが伝わる中、「ホームレスではない、ハウスレス」と彼女は妹に己の境遇をそう説明し、バンを運転しながら仕事を探して放浪する。寝るのも食事も荷台の中。カネはないけれど時間と自由は有り余っている。同じ境遇の者同士協力し合っても深くは干渉しない。家や家族は失ったけれど、特に寂しくはない。その日暮らしだけれど身の丈に合っているともいえる。西部の荒野を地平線まで貫く一本道をひたすらバンを走らせていると心が浄化されていくようだ。明け方の空、奇岩だらけの乾燥地、緑深い森と小川、満天の星、壮大な自然の中に身を置くと生きている実感がわき、生まれてきた意味が見えてくる。そんな、大都会の大量消費文明に背を向けた生き方は競争社会のむなしさを教えてくれる。素晴らしい景色や、大自然との触れ合い、フリーマーケットでの交流助け合いなど役者は2人だけで実際のノマドが出演し淡々と描かれていた。感想「さよならではなく、またどこかで」はカッコいいが金も無く帰るところがない旅は厳しいともいえる。1年ぶりの映画館での鑑賞でした。
第77回ベネチア国際映画祭金獅子賞、第45回トロント国際映画祭観客賞。第78回ゴールデングローブ賞、93回アカデミー賞では計6部門でノミネート、作品、監督、主演女優賞の3部門を受賞。




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