読書備忘録

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映画 『キャタピラー』

2010-10-01 | 映画
2010年日本映画。英題「CATERPILLAR」。若松孝二監督作品。
江戸川乱歩の短編小説『芋虫』と米映画ジョルトン・トランボの『ジョニーは戦場へ行った』をモチーフにしたオリジナルストーリーで、
傷痍軍人とその世話をする妻の姿を通じ、人間のエゴの正体に迫る。
太平洋戦争に翻弄された1組の夫婦の姿を通して戦争がもたらす愚かさと悲劇を描いている。
2010年ベルリン国際映画祭コンペティション部門で、寺島しのぶが最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞した。
1940年、日中戦争に出征した黒川久蔵(大西信満)は、4年後に、頭に火傷を負い両手足は失われ、
耳もほとんど聴こえない状態になって村に帰還した。
軍神としてその姿を讃えながらも、厄介払いのように親戚たちは妻・シゲ子(寺島しのぶ)に全ての世話を押し付ける。
食事も排せつも一人ではできず、その苛立ちは介護する妻に向けられ、まるで何かに復讐しているかのように彼女に辛く当たる。
旺盛な食欲・性欲・名誉欲を示す久蔵に献身的に仕えるシゲ子だったが、
久蔵の精神は炎に焼かれる屋敷内で中国娘を強姦・虐殺した過去の記憶に苛まれる次第に不能になってゆく。
それとともに、暴力によって夫に支配されていた過去が甦りシゲ子の憎悪が頭をもたげる。
そんな久蔵の、帝国軍人として潔く散れなかった後悔よりも、芋虫のようになってでも生きようとする生への執念がすさまじい。
疲れを知らぬ性欲と旺盛な食欲とが、死ぬべき時に死ねなかった彼の希望なき未来を象徴するのごとく。
性とは生であることを映画は訴え、自分が弱い立場になって初めて知る恐怖と絶望の心境を描く。
映画は最後に原爆を映し戦死者や戦争犠牲者の数、処刑された戦犯の数を列挙し本当の意味での戦争責任を問う。
寺島しのぶの体当たりの演技が光った映画だった。




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